自分で思考・行動しないが、批判に長ける非自立型社員
自立型社員の対極にあるのが非自立型社員だ。
自立型社員は経営者や上司の与えた課題を達成するために、いままでの経験やそこから生み出したノウハウをもとに自分の頭で考え、その課題を達成するための方法を生み出す。それに対して非自立型社員は、抽象的な課題をいくら与えても、自分の頭で考えることをまったくしない。経営者や上司が細かな指示を出せば、その通りに動くが、それ以上の仕事はしようとしないのだ。
それだけならまだいいが、非自立型社員は自分の頭で考えて行動しようとしないにもかかわらず、会社や経営者、上司を陰で批判することには長けている。
自立型社員なら「他人を批判する前に、まず自分のやっていることを振り返ってみろ」というところだ。だが非自立型社員は、そういう考え方をしない。自分に甘いといういい方もできるが、そもそも他人に自分の行動がどう映っているかを考えないともいえる。だから自分の普段の仕事ぶりを棚に上げて、会社や経営者、上司を陰で批判できるのだ。
こうした非自立型社員の言動は、新人や経験の浅い社員には、ときとして陰湿な毒を含んだものになる。無責任な批判は、だれの心にも眠っている非自立型社員的な部分を呼び覚ますことがあるからだ。
リンゴ箱の中でひとつでもリンゴが腐り始めると、つぎつぎとほかのリンゴも腐り始める。それを止めるには最初に腐ったリンゴを見極め、対処することが重要であるが、排除するしかない。会社も同じなのである。
非自立型社員の一言が、新人のやる気をそぐことに・・・
先に自立型社員は自分の給料の3倍にものぼる粗利益額を稼ぎ出すことがあると書いた。私にも経験があるが、修行のつもりで働いていた新人のころは別として、一人前の営業マンになってからは、常に自分の給料の3倍分を会社に儲けさせているかと考えながら働いていたものだ。
私はいつか独立して社長になると決めていたから、営業マンとして一人前になっても会社は学びの場だった。会社に喰わせてもらいながら学べてラッキーなどと思ったことはなく、自分が育ててもらった新人時代の「恩」を返したうえで、給料の3倍も稼ぐことで、大手を振って独立したいと考えていたものだ。
ところが非自立型社員の考え方はまったく違う。
社員になった以上、会社の業績とは無関係に給料はもらえるものだと考えている。またこれだけ実力主義といわれている現代にあっても、給料は自然に右肩上がりで増えていくと考えているのだ。
非自立型社員は、新人時代はもちろん「一人前」になってからも、自分が給料以上の働きをしているかと自問自答することがない。だから会社の業績には、まったく関心がないのだ。
そのくせ新聞で発表される「今年の平均賃金」とか「今期のボーナスの平均支給額」といった記事には敏感である。新人社員や部下の前で「ほかの会社では、こんなに高い給料やボーナスが出ているのに」と平気で不満を口にするのだ。
まともな社員なら、中小企業で新聞が報道するような高い賃金やボーナスが出るところなどあるはずがないと知っている。だが、まだ社会に出て間がない新人は、自分の給料が不当に安いような気がしてしまうのだ。非自立型社員の何気ない一言が新人のやる気をそぐ。ここでもまた非自立型社員はリンゴ箱の中の腐ったリンゴなのだ。