上昇中の銘柄を「慌てて買う」投資は失敗しやすい
本連載の第1回でも述べたとおり、今日本の株式市場には約4000銘柄が上場しています。全体相場の環境にもよりますが、上昇基調のときには4000銘柄の中からこれから上がる銘柄を探すことはそれほど難しいことではないはずです。
にもかかわらず、個人投資家は今まさに大きく上がっている最中の銘柄にどうしても目が行きがちです。上がっているのを見て、急に「これはいい銘柄だ、ぜひ買わなくては」と思い始めるのではないでしょうか。
しかし、もともと注目していたわけではなく、大きく上がり始めてから慌てて「上がっているので買おう」という投資行動は、往々にして失敗します。その理由は、買いを入れるべきタイミングをすでに過ぎてしまっているからです。そのため、買ったところが最高値圏で、結局含み損を抱えてしまうということになりかねません。また、損をしないまでも、買値からの上げ幅がわずかに過ぎず、十分な利益を得られないかもしれません。
もちろん、上昇しているところに飛び乗って「いくらか利益を取ったら、すぐに飛び降りればいい」と考える人もいて、そういう投資家にとってはわずかでも利益があれば問題ないかもしれませんが、失敗する可能性も高いことを考えると効率的な投資とは言えないでしょう。
「買い遅るるときは唯買い場を待つべし」
江戸の相場格言にも、買いタイミングを逃したときに取るべき行動について示したものがあります。それが「買い遅るるときは唯買い場を待つべし」で、現代語に訳すまでもありませんが、買い遅れたときには次の買い場を待ったほうがいいということです。
なお、この格言には前半部分があり、「買おうと思っているときに2割ほど急に上がってしまい、買い遅れたと売り方に回ることがあるが、甚だ間違いである」と述べられています。買い遅れて飛び乗るのもよくありませんし、ましてや「空売り(信用売り)」は言語道断というわけです(本連載では信用取引で売りから入ることはおすすめしていません)。
繰り返しになりますが、買いタイミングを逸した銘柄を追いかけて、高値づかみになる可能性があるのにわざわざ買う必要はありません。ファンダメンタルズから見ても本当によい銘柄ならそのままウォッチし続けて、次の買いタイミングが訪れたところで、改めて買いを入れればよいだけです。慌てずに、じっくり買いタイミングを探りましょう。