株価が移動平均線より下にあれば、反発に向かうサイン
本連載では主に「下がり切ったところで買うのが安心できる」という説明をしてきました。ただ、常に底値を狙った取引だけが有効というわけではありません。ほかにも、買いタイミングを見極めるサインはいくつもあり、その中で投資初心者や初級者にも比較的わかりやすいもののひとつが、移動平均線と株価との関係に注目する方法です。
たとえば、株価と移動平均線が離れすぎていて、株価のほうが上にある場合は相場がそろそろ天井を付けるので売ったほうがいい、逆に株価が移動平均線より下にあればここから反発に向かうだろう、というサインになります。これを数値化したものが「移動平均乖離率」で、銘柄にもよりますが、移動平均乖離率がマイナス5%程度を下回るとそろそろ反発するので買いのタイミングになると言われています。
なぜこのようなことが言われるかというと、移動平均線と株価が離れ過ぎているときは、移動平均線のほうに株価が収束されるという相場の経験則があるためです。
「下がったものは上がり、上がったものは下がる」
江戸の相場格言にも、このことをイメージさせるものがあります。「三割の高下に向かう商いは金の湧き出る泉とは知れ」で、「底値から三割上がった相場では空売りをして、高値から三割下がった相場は買いで臨めば、必ずうまくいくはずだ」という意味です。単に、「下がったものは上がり、上がったものは下がる」と言っているとも考えられますが、移動平均乖離率を組み合わせると、より具体的にイメージが湧くのではないでしょうか。
気を付けたいのは「三割」という数字ですが、この格言を記した牛田権三郎は別のところでは「五分の高下」とも言っていますので、「三割」の部分はあまり気にする必要はないと思います。
なお、本書の最後にある「付録」では、移動平均線と株価の関係から売買のタイミングを探る「グランビルの法則」についても説明しています。こちらも参照してください。移動平均線との乖離から買いタイミングを探った例はいくらでも挙げることが可能ですが、ここではブリヂストンと新日鐵住金を取り上げたいと思います。
[図表1]ブリヂストン(5108)
[図表2]新日鐵住金(5401)