ローソク足を形成するのは、投資家の「意思」「心理」
具体的な売買のタイミングを見極めるのに、ローソク足は重要なツールです。「この組み合わせになったら買い」「この陽線がここで出たら売り」など、パターンを数多く知っておくことは株取引の大きな武器になります。ただし、筆者著書『「江戸のウォーレン・バフェット」に学ぶ常勝無敗の株投資術』で再三述べているように、単にパターンを覚えて、機械的に当てはめるだけでは長い間勝ち続けていくことはできないと考えます。
理由のひとつは、ローソク足の組み合わせがまったく同じでも、相場状況や株価の位置、その銘柄が持っている材料などによって、その後の値動きは変わってくる可能性が高いからです。一方で、株価位置や株価材料についても織り込んだ上でのローソク足ということも言えます。
ローソク足を形成しているのは「ここで買う」「ここで売る」という投資家の意思と心理です。たとえば、長い陽線は「どれだけ高くても今日買いたい」と考える投資家が数多くいることの表れだと考えれば、株価位置や株価材料も含まれているということに納得できるのではないでしょうか。
ローソク足を見るときには、そうした相場参加者の心理を意識することを忘れないで欲しいと思います。それが、取引の上達にもつながっていくのではないかと考えます。
大陽線でも、常に追撃買いが有効なわけではない
さて、ローソク足は本間宗久がその元を作ったとされていますが、牛田権三郎も米相場で商いをする際にはローソク足に通じる考え方をしていたようです。ここでは、『三猿金泉秘録』の中でローソク足の動きを表したと思われる句を取り上げて、併せて具体的なチャートも紹介したいと思います。
まずは、「高下とも長き足には乗がよし、短き足には乗らざるがよし」という句です。
こちらは、ローソク足そのものの話と言ってよいでしょう。「長き足」とは大陽線(長い陽線)です。長い陽線は通常、強い相場を表します。買いたい人が多いからどんどん値が上がっていくということです。
一方、「短き足」つまり短い陽線が出るのはそれほど強くない相場のときです。つまり、「大陽線が出ているときには追撃買い(一度買った銘柄をさらに買い増すこと)のチャンスであり、陽線が短ければ(それほど相場が強くないので)控えたほうがいい」ということを言っているのです。
ただし、常に大陽線なら追撃買いが有効かというと、そうではありません。筆者著書『「江戸のウォーレン・バフェット」に学ぶ常勝無敗の株投資術』の「付録」にあります「包み足」でも説明していますが、十分に相場が上昇したところで、前日の足をすべて包み込むような形で出現した長い陽線は材料出尽くしや、最後の大きな買いを表し、そこからは上値が重くなる可能性が高いためです。相場がまだ上がり切っていないときという条件の中で、「長い陽線」に注目することが大切です。
図表1、2の信越化学工業と串カツ田中のチャートは、「長き足」の一例です。どちらも長い陽線の後に株価がさらに上昇していることがわかります。
[図表1]信越化学工業(4063)
[図表2]串カツ田中(3547)