今回は、会社の売却において、買い手から高く評価される「業績推移」について見ていきます。※本連載では、島津会計税理士法人東京事務所長、事業承継コンサルティング株式会社代表取締役で、公認会計士/税理士として活躍する岸田康雄氏が、中小企業経営者のための「親族外」事業承継の進め方を説明します。
重視されるのは、直近の業績・予測第1年度の損益とCF
売り手から開示される事業計画には、通常3年から5年分の損益予測の数値が提示されるが、ここで買い手が重視する数値は、主として直近の業績と予測第1年度の損益およびキャッシュ・フローである。買い手は、過去の実績値の趨勢を分析しながら、対象会社の正常収益力を測定し、買収価額を評価する。
それゆえ、直近の事業年度の実績値(売上高と営業利益)は、事業計画のいわば「発射台」となるものであり、極めて重要な意味を持つ。
買収提案は「業績が上向いている時期」に行うべき
高い評価を得られる業績推移は、過年度から業績が向上を続け、直近で過去最高水準を達成しているようなケースである。
たとえば、業績推移のグラフを描くとすれば、直前の実績値の延長線上に予測数値がくることになるため、過年度に右肩上がりの実績値を残していたのであれば、将来も右肩上がりのグラフを描くことができる。反対に、過年度の実績値が右肩下がりであれば、予測数値のグラフは右肩下がりとなる。
したがって、将来成長を前提とした事業計画を買い手に使用させ、買収価額を高く評価させるためには、業績が上向いている時期に買収提案を行うべきなのである。
[図表]売却タイミングと事業計画
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公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年度経済産業省中小企業庁「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。中央青山監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント営業部、みずほ証券投資銀行部M&Aアドバイザリーグループ、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部不動産投資グループなどに在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継とM&A実務を遂行した。現在は、相続税申告と相続・事業承継コンサルティング業務を提供している。
WEBサイト https://kinyu-chukai.com/
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