今回は、買い手に提示する事業計画として、その信頼性を担保する「2つの要素」を見ていきましょう。※本連載では、島津会計税理士法人東京事務所長、事業承継コンサルティング株式会社代表取締役で、公認会計士/税理士として活躍する岸田康雄氏が、中小企業経営者のための「親族外」事業承継の進め方を説明します。

「過去の実績値からの連続性」が確保されているか?

事業計画の信頼性の有無で売却価額は大きく変化する。特に損益計画は、DCF法の価値評価の基礎データとなるものであるため、対象会社の経営戦略を適切に反映させるとともに、明確な根拠を有した数値を提供したい。損益計画では、以下の点が重要である。

 

(1)過去の実績値からの連続性が確保されていること

過去の実績値と将来の事業計画に間に連続性が無ければ、その根拠を問われることになる。例えば、ある費用の発生額が、過去の実績値と比べて事業計画では異常に減少しているような場合だ。

 

そのような不連続の発生が、外部経営環境に起因するものなのか、あるいは、内部経営環境に起因するものなのか、明確な根拠を持って説明できるように準備したい。

売上計画等を細分化した「明細表」の添付も重要

(2)売上計画やコスト計画を細分化した明細表が添付されていること

例えば、小売業であれば店舗別や商品別の売上計画など、製造業であれば工場別の生産計画や製品別の売上計画など、全社の事業計画を細分化した詳細な数字が必要になる。また、将来の数値については、その数値の実現可能性が高さを示すような根拠なども準備したい。

 

主観的で曖味な事業計画では、適正な価値を評価することはできない。その意味では、将来キャッシュ・フローの状況がよく見え、その数値に根拠のある事業計画でないと、買い手としては買収の意思決定に踏み切ることができない。

 

売り手として高く会社を売りたいと考えるのであれば、売却後も対象会社が継続してキャッシュ・フローを生み出していけることについて自信をもって説明できるような事業計画を作成したい。

 

 

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