今回は、遺産分割争い防止が期待できる、「遺言書」の概要と作成のポイントを見ていきます。※本連載は、豊田剛士氏の著書、『「知らなかった」ではすまされない 地主・大家の相続対策の本質』(現代書林)の中から一部を抜粋し、相続発生後の流れから具体的な相続対策まで、相続対策の本質を詳しく紹介します。

「普通方式」の遺言には3種類ある

遺産分割争いを防ぐ対策として、遺言の活用は必ず行っていただきたい対策の一つです。地主さん、大家さんの場合、金融機関との取引がある方がほとんどなので金融機関から提案していただくこともあるでしょう。

 

ここでは遺言の概要をお伝えするとともに遺言作成の際のポイントをお伝えします。

 

遺言には「普通方式」と「特別方式」の2種類あります。特別方式は、疾病その他の事由や船舶が遭難したりして死期が迫っているときなど、伝染病により一般社会との交通が遮断されている場合など、特別な場合の遺言なので通常普通方式の遺言を使用します。

 

普通方式の遺言は「公正証書遺言」、「自筆証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類に分かれ、[図表]のような特徴があります。

 

[図表]

 

自筆証書遺言は無料で、証人なども不要で行うことができますが、必要な要件を満たしていないといった理由で使えないことも多いので、一般的に相続対策では公正証書遺言を使います。

遺言書の内容は、相続人たちにオープンにする

遺言の作成の際に大事なのは、「遺産分割の評価は時価で行う」ということです。多くの方が相続税評価しか確認していないで遺言を作成していますので、時価で現状を確認し、法定相続分、遺留分を考慮しながら、誰に何を渡すのかを決めて遺言を作成してください。首都圏では、時価評価が相続税評価に比べて2~6倍高いというケースも多いですし、不動産自体に再建築不可などの要因があれば相続税評価よりも時価のほうが低いというケースも多いので注意してください。

 

なお、自筆証書遺言と秘密証書遺言は内容を秘密にできるからよくて、公正証書遺言は内容が証人から漏れるリスクがあるのでよくないといわれることがありますが、実務上は考えにくいケースです。証人には相続人はなれないので第三者がなりますが、実務上は公正証書遺言の作成を依頼したコンサルタントや公証役場に用意してもらうことになります。その第三者から漏れるというのは考えづらい状況です。

 

また、遺産分割で揉める原因の多くは隠すことです。遺言を作成するときは、秘密にすることが大事なのではなく、被相続人が生前に遺言の内容をオープンにして相続人に言い聞かせることです。そのほうが相続人たちも納得して、後でトラブルになるケースも少ないです。

 

多くの地主さんは遺産分割に問題や課題があるというよりも、相続税の納税資金や相続税の節税に問題や課題を抱えていることが多いです。家督相続的に跡を継ぐ相続人(主に長男が多い)に対して多くの資産を遺し、他の兄弟と差をつける場合もありますし、法定相続分を意識した場合もあります。また分ける財産が少なく、利害関係人が多い場合に揉める確率は高くなるので、きちんと準備して、遺産分割対策を必ず行ってください。

 

遺言は他の相続対策と並行して行うことができますが、対策を行うことで遺言の内容も変わります。遺言は1度作ったら終わりと思っている方も多いですが、1度作ったら終わりではなく定期的に見直していくことも必要です。

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