ケースバイケースで贈与、譲渡(売買)が有利な場合も
相続の際の相続税を資産移転のための「コスト」と捉えれば、同じケースで贈与、譲渡(売買)を行ったときのコストと比較することで、最も効率的な方法を選ぶことができます。
[図表]は、相続、贈与、譲渡(売買)のときにかかる税の比較です。相続の場合は不動産取得税はかかりませんが、贈与、譲渡(売買)のときはかかります。不動産の登記を行う際の登録免許税の税率も変わります。これだけを見ると、相続、贈与、譲渡(売買)のなかで相続が有利に見えますが、ケースバイケースで贈与、譲渡(売買)が有利な場合があります。
[図表]
税務署に否認されない評価方法を使う
贈与が有利になるのが、「生前贈与」(第8回参照)で説明した不動産の値上がりが予想されるような場合や評価方法などが変わって相続税評価が上がってしまう場合などです。
また、相続、贈与の場合は相続税評価を使いますが、譲渡(売買)の場合は原則として時価です。この場合、鑑定評価、未償却残高(簿価)、固定資産税評価額、固定資産税評価額の割戻などから適正なものを選択し、使用します。未償却残高(簿価)が使える場合には、建物の築年数が経過している不動産であれば、相続、贈与ではなく、譲渡(売買)のほうが低いコストで移転できる場合があります。
この場合、土地は減価償却しないので、建物のみの未償却残高(簿価)が下がりますので、建物のみ譲渡(売買)するケースが多いです。使用した譲渡(売買)価格と、税務署の認識する時価に乖離が生じると、時価と譲渡(売買)価格の幅を「みなし贈与」とみなされ、多額の贈与税(買主が法人の場合は法人税)を支払うことになりますので、どの評価方法を使うかは税務署に否認されないように進める必要があります。
対策を行う際には資産税に強い税理士と打ち合わせ、必要であれば不動産鑑定士に不動産鑑定を行ってもらった鑑定価格を譲渡(売買)価格とする場合もあるので、相続に強い専門家チームと進めることが必要になります。