前回は、時代によって変化する入居者ニーズに対応する方法を説明しました。今回は、建築設計者がどのようにして市場の声を聞いているのかを見ていきます。

「子会社」を通じて市場の声を聞く

市場の動きをつかむことができていれば、商品性の設計を間違えることはないでしょう。市場に受け入れられやすい建物をつくることができます。

 

筆者たち建築設計者がどのような賃貸住宅にするかという点を考えるうえで、市場の声を聞くことは非常に重要です。

 

それを私たちは、不動産管理会社である六耀をグループ会社として持つことで実現しています。不動産管理の第一線を担うことで、その子会社を通じ市場の声に耳を傾けることを可能にしようという狙いです。

 

どのように連携を図っているのかを紹介しましょう。

 

不動産会社では、主に賃貸住宅、それもデザイナーズマンションと呼ばれるものの管理・運営、それに企画を手掛けています。私たちが設計を担当した賃貸住宅はこの六耀で管理するのが一般的です。現在は東京区部や神奈川東部を中心に、おおむね800戸の管理を担当しています。

 

土地の活用にあたる土地所有者にとってみれば、例えば賃貸住宅なら賃貸住宅を建てた後、その管理を誰かに任せることになります。不動産会社に依頼しても十分とはいえません。そこでどうせなら、建築が終了してオーナーに引き渡して業務がすべて終わってしまうのではなく、管理にも関わろうと考えた次第です。

競合物件を把握して「リフォーム提案」に生かす

実際に手掛ける具体的な業務の一つは、マーケティングです。土地活用を図ろうとする土地の半径500m圏内の競合物件をしらみつぶしに調べます。どこに、どのような競合物件があるかを、つかんでおくのです。

 

同時に、近隣の生活利便性や特徴のある店舗などに関する情報も把握します。的確な家賃設定には欠かせないプロセスですし、そこで設定された家賃をもとに事業収支を具体的に検討することができます。

 

しかも、この段階で古い木造アパートも確認しておきます。古い木造アパートであれば、向こう5~10年の間に建て替え、賃貸マンションに生まれ変わる可能性が高いからです。つまり、将来は競合物件になりそうなものも把握しておくのです。

 

近隣にどのような競合物件があるか分かると、新築時だけでなく、その後何年かたった段階でのリフォーム提案にも生かせます。

 

確認しておいた古い木造アパートはその頃には建て替わっているでしょうから、リフォーム提案の段階で改めて最新の状態を確認することが手早くできるわけです。それは当然、リフォーム提案の内容に反映させることになります。

本連載は、2014年6月12日刊行の書籍『変形地の価値を高めるマンションづくり』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

変形地の価値を高める マンションづくり

変形地の価値を高める マンションづくり

宮坂 正寛

幻冬舎メディアコンサルティング

別荘地のような斜面地、一角に他人の土地を挟む変形地、奥まった場所にある旗竿地…。 活用をためらってしまうような条件の悪い土地を活用するためには、その土地の潜在価値を引き出すことが重要です。本書では、そのために必…

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