入居者のニーズを「タイムリー」につかむことが重要
入居者のニーズは時代とともに変わります。いきおい、商品設計にも変化への対応が求められます。デザインは時代の変化に敏感でなければなりません。
したがって、独りよがりのデザインだけというのは、意味を持たないということになります。それは付加価値を高めているということにつながらないからです。賃貸住宅のデザインであれば、その市場に受け入れられなければ意味を持たないのです。
今、入居者からは何が求められているのかをタイムリーにつかむことが不可欠です。住宅の量を追い求める時代から質を追い求める時代に移り変わり、入居者の求めるものも当然に変わってきているからです。
現代人は自分の空間を求め、自室で過ごす時間が増えてきています。家賃が相場より10~15%高くても、自分の求めるものが存在する部屋や空間を求めるものです。変化する入居者ニーズに対応することが必要です。
内装や設備は必要に応じて取り替えられるようにする
興味深い調査結果があります。リクルート住まいカンパニーが、東京圏の中堅・大手の不動産管理会社を中心に構成する21C住環境研究会と共同で、東京圏で2012年9月から翌13年3月までの間に賃貸借契約を交わした入居者1137組を対象にWeb上で実施した調査です。この調査では、住まいに対するニーズなどを聞いています。
調査では例えば、多少家賃が上がっても欲しいサービス・設備を聞いています。選択肢の中から複数回答可で選ばれたのは、1位が「24時間ごみ出し可能」で4割強の回答者が挙げています。2位以下は、「宅配ボックス」(28.4%)、「防犯カメラ」(24.3%)と続きます。時間を問わずに生活できる、24時間の安心を求めているようです。
住まいに最初から付いていてほしい設備・仕様をやはり複数回答可で尋ねると、身軽に引っ越ししたいとの気持ちが垣間見えます。1位は「壁掛け薄型TV」で、17%近くの回答者が挙げています。これに、「洗濯機」(15.4%)や「乾燥機」(15.2%)が続きます。
4位は「冷蔵庫」(15.1%)で「洗濯機」や「乾燥機」とそう変わりない割合の回答者が挙げています。引っ越しを大掛かりにする大型の家電製品は自分のものを持ち歩くより、住まいに備え付けられていたほうが助かる、と考えているようです。
結果をご覧になってどのような感想をお持ちでしょうか。「なるほど」と納得できる面がある一方で、理解に苦しむ点もあるかもしれません。地域によっても、世代によっても、入居者が住まいに求めるものは異なり、それはまた、時代とともに変化するからでしょう。賃貸住宅の経営では、市場ニーズを常につかんでおくことが不可欠です。
もちろん、市場ニーズというものは時代の流れの中で変化していきます。変化のスピードは速く、これまで5年、10年かけて起きた変化が、今は、半年、1年で起きることもあるでしょう。この変化にも追いつかなければなりません。
そうなると、構造のような基本部分はしっかりつくる一方で、内装や設備のような入居者ニーズが時代とともに変わり得るものは、必要に応じて取り替えられるようにつくっておくことが求められます。
それによって、いざとなれば構造体はそのままに内装や設備をごっそり入れ替えることが可能になります。市場の変化で生まれた新しい入居者ニーズに対応しようとするときも、比較的手軽な工事で済む良さがあります。