「事業計画」をグラフ化し、毎年の変化を確認
貸ビル業の事業計画を立てる場合の主な項目は、次のとおりです。
これらの各項目のひとつひとつについて、少なくとも今後10年間について、いくつかの試算をします。もし、あなたがこれまで事業計画を作成したことがないなら、シンプルなものでよいので一度作ってみてください。目の前に具体的に表れた数字は、リアル感をもって伝わってきます。グラフ化すると、毎年の変化や影響度が一層わかりやすくなります。それぞれの場合に事業がどのようになるか確認し、対策が必要と判断したら、具体的な対策を立て実行に移しましょう。
(1)収入
収入には、基本的に次の5項目があります。
①賃料
②共益費
③駐車場等
④テナントからの水道光熱費
⑤一時金
これらのうち、一時金は新規にテナントが入居した際などに発生します。なお、一時金の運用益は、実際のお金の管理上、一時金を他の資金と区分けしていないため、計上できないかもしれませんが、安全面で計算することとなりますので、計上しなくてもよいです。
「維持管理費」を削減する場合は、慎重な対応が必要
(2)支出
支出の内容は、基本的に、以下の9つがあります。
①維持管理費
②水道光熱費
③修繕費
④プロパティマネジメント委託費(運営を委託しているとき)
⑤公租公課(固定資産税など)
⑥損害保険料⑦資本的支出(設備更新等)
⑧返還する一時金(退去に伴い返還する敷金等)
⑨借入金の元利金返済額
空調設備やエレベーター取り替えなどの長期的に使用するための資本的支出と、テナントが退去した後に返還する敷金等の一時金は、それらが発生するであろうと予測した年に計上します。これら一時的に大きな支出が見込まれるものと、毎期支出し額に変動が少ないものとは、分けて考えなければなりません。
これらの項目の中で、比較的ビルオーナーが手を付けやすいものが①維持管理費で、コスト削減の対象になりがちです。しかし、この項目は、ビルの商品価値に大きく影響する内容も含まれているため、一律のコスト削減ではなく、よく考えた対応が必要です。コストを削ったのはよいが、テナントからの評判を落としたり、空室部分へのテナント誘致が遅れるなど、コスト削減以上に収入が減ったのでは、負のスパイラルに陥ります。
(3)費用
設備更新等の資本的支出(現金支出)がありますが、利益を計算する上では、その年度以降の各年度に、支出した内容に応じて法人税法で定められている年数にわたり、減価償却費として割り振られます。
[図表]
したがって、損益計算上は、支出の合計額から資本的支出(設備更新等)を差し引き、過去に投資した分の減価償却費を加えることになります。
これらの項目について表計算ソフトを使えば、簡単な計算で、予測することができます。ひとつひとつの計算式は簡単です。しかし、それぞれの項目に、どのような数字を入れるか。数字を入れるのは小学生でもできますが、なぜ、その数字にするのか、これは専門家でも悩ましいところです。
将来のことですから、だれにも正確なことはわかりません。これは、貸ビル経営以外の商売でも同じことです。試算をしながら、将来の財務上の数字がどのようになるかを予測し、何をしなければならないかをつかみ取るしかありません。