経営する貸ビルの「資産価値」を高めるには?

今回は、貸ビル経営において重要な「資産価値の高め方」をふたつの視点からて見ていきます。※本連載は、不動産経営コンサルタント・三つ星オフィスビルプロデューサー・不動産鑑定士として活躍する、釜口浩一氏の著書『これからのビル経営 利益を生み続けるための基本がここにある』(キョーハンブックス)の中から一部を抜粋し、ビル経営において長期安定した収益を確保するための財務視点をご紹介します。

貸ビル経営はいかに「賃料収入を高めるか」がポイント

私たちは、日頃、「資産価値」という言葉を使います。不動産も資産ですが、貸ビル経営を始める理由の一つに、相続時の財産評価額を下げるということがあります。

 

貸ビルは、相続財産の計算上、土地と建物の評価額が下がります。結果として、現金を持っているよりも、税額が少なくなります。土地も建物も、役所が定めた相続税路線価や固定資産税評価額が基礎となっています。

 

しかし、ビル経営を考えるときには、市場価値、つまり、売れる価格を高める方向に考えましょう。ここでいう「資産価値を高める」とは、売れる価格を高めることです。

 

貸ビルの場合、いかに収入を高めるかが第一のポイントです。現在、貸ビル(建物と土地)の買い手は、まずは、粗利回りで判断する人が多いです。粗利回りは、賃料収入を価格で割ったものです。まずは、売出価格で計算しますので、粗利回りが高いということは、賃料収入が高いことです。たとえば、売出価格10億円で年間の賃料収入が1億円とすると、粗利回りは10%です。

 

年間賃料収入1億円÷売出価格10億円=粗利回り10%

 

ビルオーナーであるあなたが、いくら賃料を上げたいと思っても、賃料を支払うのはテナントです。結局は、日頃からお客様であるテナントに対し、ビジネスの場としての良質なオフィスを提供しているかどうかが、賃料を高く維持する鍵となります。

 

賃貸オフィス市場の賃料水準が下がっているときであっても、下げ幅を少なくすることが、継続して安定した賃料収入を得ることになりますし、結果として、資産価値である売れる価格を維持することにもつながります。

 

無駄な支出が多ければ、毎年の現金残高は少なくなる

また、投資の分析精度を高めたい人は、粗利回りでなく、収支項目を分析して価格を判断します。

 

具体的には、今後の収入と支出の各項目を予測してビル(土地と建物)価格を判断します。事業計画により価格を判断するということです。このため、売上(賃料等)が同じビルが2棟あっても、無駄な支出が多ければ、毎年の現金残高は少なくなります。結果として価格は安くなります。

 

数字を使って説明します。Aビルは、1年間の賃料収入が1億円で、支出が3000万円の場合、現金は7000万円残ります。これに対する投資家の期待利回りが5%とすると、そのビル(土地と建物)の価格は14億円です(7000万円÷0.05)。

 

Bビルの賃料収入はAビルと同じ1億円ですが、支出が4000万円で現金は6000万円残ります。投資家の期待利回りが5%とすると、12億円です(6000万円÷0.05)。実際にここまでの支出の差はないでしょうけれど、支出の違いが価格に影響することがわかります。

 

Aビルの価格

年間賃料収入1億円-年間支出3000万円=想定現金7000万円

想定現金7000万円÷買手が期待する利回り5%=価格14億円

 

Bビルの価格

年間賃料収入1億円-年間支出4000万円=想定現金6000万円

想定現金6000万円÷買手が期待する利回り5%=価格12億円

「悪いコスト削減と良いコスト削減」の違い

「では、支出を少なくすればよいのだな」というわけでもありません。

 

本来必要な支出を削った結果、収入が減るのでは本末転倒です。たとえば、清掃の委託費を削減しようということで、清掃回数を減らし、エントランスホールなどに汚れが目立つようになったら、テナントやテナントを訪れるテナントの取引先等は、どのように思うでしょうか。

 

賃料改定に悪影響を及ぼしたり、テナントの退去で空室が発生したりすると、売上が下がります。コストを3%削減しても、オフィスビルとしての環境が悪化し、空室が生じたり賃料が下がったりして売上が5%下がったのでは、残る現金は少なくなってしまいます(悪いコスト削減)。大切なことは、コストを削減するにしても、売上を維持できる内容であることです。そうすれば、残る現金が増加します。コストの内容を分析し、売上を維持しながらのコスト1%削減は、手元に残る現金が増加しますので、良いコスト削減です。

 

他の商売と同じで、無駄な支出がないか、品質を保ったままコスト削減できるか、という視点が大切です。

 

なにがなんでもコスト削減3%→テナントの不興→売上減少5%:悪いコスト削減

コスト内容を分析し削減1%。売上維持:良いコスト削減

不動産経営コンサルタント
三つ星オフィスビルプロデューサー
不動産鑑定士

早稲田大学商学部卒。1987年日本電信電話株式会社入社。1990年の本社不動産部門配属後、エヌ・ティ・ティ都市開発株式会社での複合再開発、株式会社NTTファシリティーズで企業不動産コンサルティング等(途中3年間の財団法人日本不動産研究所への出向を含む)の実務を行い、2005年に株式会社リアルエステート・アドバイザーズを設立し現在に至る。実務と理論を融合した分析・判断と率直な意見は、顧客からの信頼を得ており、長年にわたりリピートして依頼する企業・専門家が多い。

著者紹介

連載長期的に利益を生み出す「ビル経営」の「財務」基礎講座

本連載は、2015年9月28日刊行の書籍『これからのビル経営 利益を生み続けるための基本がここにある』(キョーハンブックス)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

 

これからのビル経営 利益を生み続けるための基本がここにある

これからのビル経営 利益を生み続けるための基本がここにある

釜口 浩一

キョーハンブックス

賃貸アパート・マンションへ“投資"指南書は数多くありますが、本書は、賃貸オフィスビル(貸ビル)を対象としており、しかも、“経営の指南書"です。 ビル経営は、様々な専門性が必要とされます。建築、設備、賃貸借契約、ビル…

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