「減価償却費」が多ければ、手元に現金が残るが・・・
ビル経営は、賃貸オフィス事業です。したがって、利益がでたら、課税されます。基本的には、現金収支と同じですが、損益計算では減価償却費を費用として計上します。利益計算上は費用になりますが、現金支出はありません。また、設備更新などの投資は多額の現金支出がありますが、支出した年度での費用計上は一部にとどまります。これらの点が現金収支と異なります。そして、減価償却費が多いほど、課税対象となる利益は少なくなりますので、結果として現金が手元に残ります。
では、節税目的で税金を少なくするために、投資を多くして減価償却費を多くすればよいのでしょうか。資産として残るから、投資を増やしたほうがよいのでしょうか?
「過剰な建物投資」が資産価値を下げることに
わかりやすくいうと、同じ大きさの建物を作るのに、A社は10億円で建築し、B社は15億円で建築しました。賃料収入も維持管理費も、どちらの建物も同じ額とします。A社はB社よりも減価償却費が少ないため、その分、税金は多くなります。税金を少なくするために、B社のような行動をとることを勧める人がいたら、まず、この単純な疑問を持ってください。だれもがA社と同じ行動をするはずです。
「10億円で建てられるものに、15億円支払うか?」
投資した分だけ資産価値が高まると思うかもしれませんが、資産価値を売却価値と考えると、過剰投資分にお金を払う人はいません。反対に、過剰な投資により、将来の修繕や清掃等の維持費に余分なお金がかかる懸念があります。余分なお金がかかるのであれば、その分、そのオフィスビルから得られる手取りのお金が少なくなるため、売却価値は下がります。つまり、過剰な建物投資は、毎年の収入を減らす結果になるとともに、資産価値まで下げてしまうことになりかねないのです。
事業として考えた場合、まずは、いかに収益を高めるか。そのうえで、節税を考えるべきです。本末転倒にならないようにしましょう。減価償却費は、既に建物を取得するために投資した現金を回収しているのであると考えるのが良いのです。