今回は、「古アパートと築浅アパート」「使用貸借地」の相続税評価と、鑑定評価基準を探ります。※本連載では、相続税対策を始めとするあらゆる資産税業務に精通したプロ集団、JPコンサルタンツ・グループによる著書、『相続の現場から見た! 特殊な土地の財産評価』(法令出版)より一部を抜粋し、相続の現場で見られる「特殊な土地」の財産評価について、不動産鑑定評価基準等を踏まえ、多くの事例を挙げて詳細に解説します。

築年に応じた評価差はない、古アパートと築浅アパート

 

(1)相続税評価

土地価格について地上建物の築年に応じた評価差は生じません。本件古アパートのような場合には、賃貸割合を考慮すれば、次のような結果となる場合も考えられます(評基通26⑵)。

 

 

(2)不動産鑑定評価基準等

①築浅アパート

収益物件として有効活用されていることから、主として収益還元法に基づいて市場価格が決定されます。また、通常は土地と建物を一体(複合不動産)として価格が認識されます。

 

 

②古アパート

取壊最有効の観点を検討し、そうであると判断されれば、現入居者への立退料や取壊費用を織り込んで評価されます。

 

自用地として評価される「使用貸借地」

 

(1)相続税評価

現行では、個人間で土地の使用貸借があった場合には、その土地の使用貸借に係る使用権の価額は零とされています。つまり、使用貸借開始時には使用権に対する贈与税課税は行いませんが、相続開始時には当該土地を自用地として評価し、借地権等土地使用権についての減価は行いません(使貸通1、3)。

 

(2)遺産分割実務

使用貸借による土地使用権は、民法で「当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主はいつでも返還を請求することができる」等と規定されており、さらに市場性がないことから独立した経済価値を見い出し難い権利となっています(民597)。

 

実務上、遺産分割や収用等の特殊な場面において、使用借権の経済価値を配慮しなければならない場合においては、使用借権価格は当該土地価格の10%~30%とすることが多いようです。

 

しかし、遺産分割においては、使用借権を特別受益として持戻しの対象とする場合も考えられます。この場合には、結果として土地全体が遺産分割の対象となります。

 

相続の現場から見た! 特殊な土地の財産評価

相続の現場から見た! 特殊な土地の財産評価

佐藤 健一,小林 登

法令出版

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