
今回は、「古家が建つ土地」の相続税評価と、不動産鑑定評価基準等を探ります。※本連載では、相続税対策を始めとするあらゆる資産税業務に精通したプロ集団、JPコンサルタンツ・グループによる著書、『相続の現場から見た! 特殊な土地の財産評価』(法令出版)より一部を抜粋し、相続の現場で見られる「特殊な土地」の財産評価について、不動産鑑定評価基準等を踏まえ、多くの事例を挙げて詳細に解説します。
家屋の築年数や管理状況は「土地評価額」には影響なし

(1)相続税評価
土地と家屋の評価額を別個に求め、両価格を加算した額が課税価格を構成します。家屋の築年数や管理状況は、土地評価額に影響を与えません。

市場価格は、更地価格から古家取壊費用を引いた価格に
(2)不動産鑑定評価基準等
不動産鑑定評価基準では、建物等の定着物がない未利用の「更地」と、建物等の存在を前提としてその建物等との関連において最有効使用の状態が左右される「建付地」の評価類型を区分しています。
古家の市場価値はゼロ、しかも本件不動産の購入者は古家を取り壊して建物を新築することを目的とするため、更地価格から古家取壊費用相当額を控除した価格が市場価格になると考えられます。このような場合は「取壊最有効」といわれ、古家があるがゆえに、更地価格よりも市場価格が低減してしまうこととなります。

なお、取壊最有効とはいえないまでも、容積率を有効に消化していない建物が存する場合(建物と敷地の不適応)や、建物用途が周辺地域に適合していない場合(建物と環境の不適合)等は、当該建物等が存在することによって土地の用役潜在力を充分に発揮することができずに制約を受けているといえることから、土地の最有効使用を前提とした低下分(「建付減価」といいます)を控除するという考え方があります。