
今回は、「相続人所有地に隣接する土地」の相続税評価と、不動産鑑定評価基準を説明します。※本連載では、相続税対策を始めとするあらゆる資産税業務に精通したプロ集団、JPコンサルタンツ・グループによる著書、『相続の現場から見た! 特殊な土地の財産評価』(法令出版)より一部を抜粋し、相続の現場で見られる「特殊な土地」の財産評価について、不動産鑑定評価基準等を踏まえ、多くの事例を挙げて詳細に解説します。
「権利を有さない土地」と一体とする評価はありえない

(1)相続税評価
被相続人が何ら権利を有していない土地(A土地)と一体として評価するという発想はありません。ただし、分割の場合について「不合理分割」という考え方があります(評基通7-2⑴(注))。
正常価格で評価するか、限定価格で評価するかが焦点に
(2)不動産鑑定評価基準等
本件は価格の種類の捉え方の違いであり、双方の主張に合理性や市場性が認められます。被相続人の所有土地を単独で評価した価格を「正常価格」、相続人A土地との併合を前提として評価した価格を「限定価格」といいます。
本件被相続人所有土地を、正常価格で評価するか、限定価格で評価するかは、相続人等の合意事項によると考えられますが、限定価格とする場合には、一体利用による増分価値を正常価格に加算して評価することとなります。
なお、「不動産鑑定評価書には、正常価格を求めることができる不動産について、依頼目的及び条件により限定価格、特定価格を求めた場合は、かっこ書きで正常価格である旨を付記してそれらの額を併記しなければならない。」とされています(鑑定評価基準第9章第2節Ⅰ)。
