前回は、「仕事のできる人」こそ人材強化プログラムへ参加すべき理由を解説しました。今回は、英語力・プレゼン能力が「飛躍的に向上」した研修生の事例を見ていきましょう。

TOEIC450点、「効果が感じられない」と悩むZさん

これは、当社で研修を受けたZさんのお話をもとにしたフィクションである。

 

Zさんはそれまで、典型的な「グローバル化していないコア」人材だった。それは英語力だけの問題ではない。仕事には真面目で責任感もあり、上司にも部下にも信頼されていた。日常の業務や自分のやり方からは大きな満足感を得ており、自分を大きく変える必要性も意思も持ち得なかった。そしてグローバルなビジネスはどこかで他人事だと感じていた。

 

会社の人事部はZさんを同世代のリーダー的な存在と見ており、私たちのトレーニングを受けさせることにした。コース直前にいやいや受けたTOEICでのZさんの点数は450点で、彼は質問されても黙って下を向いてしまうほど暗い雰囲気を漂わせていた。体調が悪いのかと講師に尋ねられたくらいだった。

 

月1回2泊3日の泊り込みで1年間続く研修の3回目に、Zさんは落ち込んだ表情で私に助けを求めてきた。

 

「自分なりに努力して勉強に時間を使っているのですが、全然効果が感じられないのです」

授業で「最初に質問する」ことを決意し、実行

私は丁寧にヒアリングをして、実際にZさんがアドバイス通りに大量の英語をインプットし、自分のストーリーを英語で10以上つくり、それを毎日音読する習慣を続けていることを知らされた。

 

「ティッピングポイントというお話を知っていますか?」と、私は訊ねた。

 

「牛乳のような真っ白な液体に、赤ワインのように色のついた液体を一滴ずつたらしていきます。最初は色の変化は目立ちません。しかし、ある瞬間を境に、液体がピンク色に染まっていることに気づきます。これがティッピングポイントです。ティッピングポイントを超えるとあとはどんどん赤くなる一方です。Zさんの英語もそれと同じです。まだ自覚はないかもしれませんが、確実に力はついています」

 

「でも」と言い募るZさんに対して、私は一つお願いをした。

 

「まず何でもいいから明日の授業で最初に質問しようと決意してください。そして、何を質問しようか考えながら講師の話を聞いてみてください」

 

次の日、彼が初めて自ら発言したのを見たクラスの仲間からは自然と拍手がわきおこった。それまで、いちばんできないと思われていたZさんは、拍手が聞こえないかと思われるほど鬼気迫る表情をしていた。

 

こうしてグローバルスキルと経営のフレームワークを意欲的に身につけたZさんは、最終的に1年前には想像もできなかったような英語でのプロフェッショナル・プレゼンテーションを最終日にこなした。彼をよく知る上司が、あまりの変貌に声をなくしたほどであった。

 

その半年後に上海支社にマネージャーとして赴任することになったZさんは、現地法人で中国人の同僚と協働してトレーニングの効果を知ることになる・・・。

パーソナル・グローバリゼーション

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布留川 勝

幻冬舎メディアコンサルティング

変化の激しいグローバル化時代に必要とされるスキルについて、数多の日本企業のグローバル人材育成をサポートしてきたグローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ。 代表取締役の布留川勝氏がグローバル…

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