仕事ができる人は忙しく、研修への参加を敬遠するが…
グローバル・エデュケーションには、国内で行う1年間のグローバル人材強化プログラムがあることは先に説明した通りだ。
内容は本書で説明した5つのツールを強化し、そこにさらにMBA的なスキルを加えたものである(詳しくは本書籍をご覧ください)。それらはすべてを英語で行うワークショップだ。通常はマーケティング理論は日本語で教えて、英会話レッスンは別に行えばいいと考えがちだが、シンガポールであっても、インドであっても、グローバルスキルのワークショップは英語で行われている。
たとえ完全には分からなくとも、英語でやり続けることにより、受講生も英語で考えることに慣れていき、結果的には英語力が飛躍的に伸びることになる。
だから私は研修に参加する人材の選定にあたり、クライアント企業の人事部に一つの注文をつけさせていただいている。それは「英語のできる人」ではなく「仕事のできる人・人間力のある人」を参加させてほしい、ということだ。
「仕事のできる人」ほど研修には参加したがらない。日々の仕事だけで忙しく充実しているからだ。各部署もそのような人を出したがらない。昨今はさすがに減ってきているが、英語が得意で仕事はあまりできない人が研修に送り出されてくる。結果として知的レベルも切磋琢磨のレベルも低くモチベーションがあがらず大金をかけた研修が無駄になる。
もしあなたが、「研修には意味がない」というネガティブイメージを持っているとしたら、そのせいかもしれない。だが、そう思うようなあなたこそ、研修で大きく飛躍できる可能性があるのだ。
人生を変革してくれるマインドこそが、何よりの宝物に
以下は、研修に参加してくれたYさんからメールだ。
「最初の数回は本当に知恵熱が出ました。講師の英語が理解できず、発言することもできず、苦しかったです。
仕事でかなりさまざまな部分のブレインを酷使した自負がありましたが、そんなものとは比較にならないくらい頭の疲労は激しく、同時に精神的にも体力的にも疲労しました。本当につらかったです。それでも何とか最後まで来ることができて感無量です。
この研修で得たものは、単なる知識やスキルではありません。生きること、人生を豊かにすることのさまざまなヒントを学びました。そして何よりもかけがえのない、さまざまな仲間と巡りあいました。講師の方、事務局の方、会社の総務の面々ももちろんその大切な仲間です。
そして、研修最後の、卒業証書授与。まったく予想しなかったけど、涙があふれて止まりませんでした。バレないように下を向いてアンケートを書いているフリをしたので、周りの様子を見られなかったけど、多分涙していたのは私だけではなかったと思います。
ジェームス・ドハティ先生の最後の挨拶も、あれはきっと涙を隠したんでしょうね。言葉に詰まってたから。
先生は、このボンクラ集団に対して、素晴らしい仲間と過ごすことができたと、本当に楽しかったと、この研修は一生忘れないと、そういってくれました。あれは決してお世辞なんかではなく、心からの言葉だったと確信しています。私も先生に対して、大いなる尊敬と、愛情を抱いてます。彼の教えを経験できてよかった。彼と出会えてよかった。本当によかった。
仕事なんてチンケな物差しだけでなく、私の人生をドラマティックに豊かにしてくれた、偉大な先生に、心から感謝し、深い敬意を表します。ありがとう。
先生からもらった豊かな人生のためのキーワードがたくさんあります。なかでも以下の言葉は永遠に私の人生の灯火となるでしょう。
〝The powerful force of my life is the purpose in my life.〟(私を突き動かすのは人生の目標だ)
〝The biggest obstacle to your success is you.〟(きみの成功を阻む最大の障害はきみ自身だ)
〝You will never go any higher than you think.〟(きみが思えば思っただけ高い地平に到達することができる)」
私たちの研修に参加してくれた人たちのこのような変化を目の当たりにすると、私自身も感動を禁じ得ない。通常業務では決して味わうことのない痛みのなかで、自らを励まして決して諦めないで努力を続ける方々には本当に頭が下がる。
研修での痛みから得るものは決して英語力などのスキルだけではない。人生を変革してくれるマインドこそが何よりのギフトになるだろう。