前回は、日本企業にいながらグローバル社会を生き抜く人材となる方法を紹介しました。今回は、グローバル研修で「生まれ変わった」大企業従業員の事例を解説します。

「グローバリゼーション=欧米化」の誤解

本書では、個のグローバル化に向けて自らを訓練しなければならないことをお伝えしてきた。個人が力を磨くことはもちろん、企業としても、選抜した優秀な人材をグローバルリーダー化していくことが喫緊の課題である。日本国内ではいくら優秀であったとしてもセールスマン、人事、マーケターがグローバルマーケットで通用しなければ意味がない。

 

グローバル・エデュケーションでは1年間かけて、グローバルリーダーの育成を行っており、その集大成として、最終的には英語での成果発表を行うシステムを構築している。このほかに、海外の優秀な人材が集まる大学への留学も支援している。

 

国内で活躍してきたトップ級の人材がグローバル化することで組織全体がエネルギッシュになっていく様子は幾度となく見受けられる。

 

グローバリゼーションとは、決して欧米の「進んだ」文化を取り入れることではない。そうではなく、デファクトスタンダードとなったビジネススタイルのうえで、さまざまな人間が触れ合うことによって、よりよい文化が生み出されることなのだ。

「世界には、全然違う価値観がありました」

グローバル・エデュケーションで海外研修をコーディネートさせていただいた大手企業の宣伝部のXさんは、研修後に帰国したときには表情がまったく違っていた。

 

「世界には、全然違う価値観がありました。10年以上も日本の大手企業の第一線で働いてきて、そこそこの実績もあるし、わりとイケてるんじゃないかと思っていた自分が、いい意味で壊れました。頭のなかに違うものが入り込んで、いつのまにか変化してしまったような感じです。まだまだ自分はやれるし、これからが人生という気持ちになっています」

 

Xさんはこれまで、いい意味でも悪い意味でも自分の所属する組織の論理に染まっている人であった。だが組織内部にいるとそれが自覚できず、むしろ自分はいろいろな価値観の違いを分かっていると思い込んでいたのだ

 

Xさんはもともとビジョナリーシンキングとセルフエンパワーメント、およびコミュニケーションのレベルが高い人だった。だが、ダイバーシティ、そして国内ではほとんど使うことのないグローバルイングリッシュのレベルが不足し、そのため研修開始直後はセルフエンパワーメントやコミュニケーションの能力も崩れてしまったようだった。

 

しかしXさんには、必ず成功するという揺るぎないビジョナリーシンキングがあった。はじめはほとんどしゃべれなかった英語も、帰国前にはブロークンながら驚くほど流暢になり、ダイバーシティの能力が伸びたためか多くの友人をつくり、彼らと一緒に仕事ができたらいいと語るXさんは、明らかにグローバル人材となっていた。

 

今回の海外研修を通じて、Xさんが学んだことが二つある。一つは、世界には多種多様な価値観があるが、日本にいたときにはそれが本当の意味では理解できなかったこと。もう一つは、その多様性に触れることで感性が磨かれて、新たなモノの考え方や独自性が生み出されるはずだということだ。

 

たとえば東南アジアのタイ王国は、日本から見ると一見「途上国」に見えるかもしれない。だが、タイで広告のワークショップが開催されれば、日本や韓国や中国からクリエイターが参加するような状況が現在、広がっているのだ。これはその土地固有の文化にグローバルな価値観が流れ込んだ一つの例にすぎない。

 

日本はどうか? 過去の成功のうえにあぐらをかいていないか?

パーソナル・グローバリゼーション

パーソナル・グローバリゼーション

布留川 勝

幻冬舎メディアコンサルティング

変化の激しいグローバル化時代に必要とされるスキルについて、数多の日本企業のグローバル人材育成をサポートしてきたグローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ。 代表取締役の布留川勝氏がグローバル…

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