「隣室に居てもピアノの音が気にならない」空間を実現
少し専門的な話になりますが、現在ミュージションは、D—65というレベルの遮音性能を保持しています。遮音性能とは、隣室から室内へ侵入する音、漏れる音をどれくらい遮ることができるかということです。
遮音性能がD—65ということは、たとえば、ピアノの平均音圧レベル95dBが、隣室で30dB(深夜の住宅地)程度になるということです。これなら、一般的な生活騒音はもちろん、楽器の演奏やスピーカーの音も、「うるさい」とは感じられなくなります。だから、安心してレッスンや音楽鑑賞に集中できるのです。
つまり、ミュージションに住めば、楽器を弾いていて、隣の人から壁をドンドンと叩かれるようなイヤな気持ちを味わわなくて済むということです。ミュージションに越してくる方の中には、「前に住んでいたマンションで音に関する苦情を受けたことがある」という方が多くいます。実際に苦情を受けるとまではいかなくても、「苦情をいわれたらどうしよう」とビクビクしながら演奏していて心が休まることがなかった、という方も少なくありません。これではいい演奏ができるわけがないでしょう。
筆者にはバイオリンが趣味の知人がいるのですが、以前、彼女がマンションでバイオリンを練習していたら、隣の人が怒鳴りこんできて、ものすごいショックを受けたという話を聞いたことがあります。彼女の住んでいたマンションはがっちりした分譲マンションです。彼女はそのマンションの窓、カーテン、ドアを全部閉めて、隣に住んでいる人がいない端の部屋に移動し、夕方、バイオリンを弾いていたのだそうです。
一般的に、分譲マンションの遮音性能は、D—40~45程度ですから、通常90~95dBレベルのバイオリンの音は、うっすらと外に聞こえていたかもしれません。怒鳴りこんできた相手は、その音に腹を立てて、彼女が泣くまで責め続けたのです。
時間帯も夜ではなく夕方ですし、個人的には腑に落ちない話だと思いますが、何を不快に感じるかは人それぞれですので、集合住宅では他人が多く集まって暮らす以上、そういうリスクもあることは想定しておかなければならないでしょう。
誰も挑戦しない「遮音レベル」を追求
65dB/500㎐の遮音性能を目指すことは、かなりリスクのあるチャレンジでした。なぜなら、音は目に見えないので、どこからか音が漏れていても、原因が完璧には追究できないからです。もし、予定どおりに遮音できず、躯体となるコンクリートに問題があるとなれば、もう一回壊して作り直す羽目になるかもしれないのです。逆をいえば、そのリスクが怖いから、誰もここまでのレベルの音楽マンションを作らなかったのでしょう。
正直、この技術を確立するためには、相当な時間とコストがかかりました。しかし、ミュージションの入居者たちが、「自分の大好きな音楽を奏でることで、誰かに迷惑をかけてしまう」「ヘッドフォンをつけなければ安心して練習できない」という悲しい思いをしなくて済むと考えれば、そのかいはあったと考えています。