
本連載では、相続税対策を始めとするあらゆる資産税業務に精通したプロ集団、JPコンサルタンツ・グループによる著書、『相続の現場から見た! 特殊な土地の財産評価』(法令出版)より一部を抜粋し、相続の現場で見られる「特殊な土地」の財産評価について、不動産鑑定評価基準等を踏まえ、多くの事例を挙げて詳細に解説します。
資産としての比重が高く、「思い入れ」という要素も
土地は、相続財産の中でも価値的に重要なウエイトを占めています。さらには、被相続人や家族の思い入れ等が入り込むナーバスな資産でもあります。
相続税の計算に当たっては、被相続人が関わる土地について遺産分割に必要と否とに関わらず、値段を付けるという作業が必然的に生じることとなります。その結果、税理士が納税者等への説明を求められる場面も多くなっています。
財産評価基本通達の運用の難解さもさることながら、利害が対立する遺産分割においては、実勢価格、評価時期、小規模宅地の効果、さらには相続人の思い入れ価格等が錯綜します。財産評価基本通達、民法、不動産取引慣行が異なっているなかで、申告期限に向けて合意を形成していかざるを得ません。
「財産評価基本通達」の規定にも限界が…
不動産鑑定には、鑑定によって求める価格はその不動産が本来持っている価値を示す「あるべき価格」なのか、現場の市場を反映した「ある価格」なのかという伝統的な議論があります。相続税評価と遺産分割のための評価には、このような「あるべき価格」と「ある価格」のような関係を感じます。
現行の不動産鑑定評価基準では、この点について、鑑定評価によって求める価格は「ある価格」であるとの決着を見ています。同様に、利害が対立する遺産分割においては、正しく「ある価格」への指向が必要な場合があると思われます。
税の専門家にとっては、財産評価基本通達を適正に運用し、かつ、説明できることはもちろん、同時に財産評価基本通達にも限界があることを知ることで柔軟な対応ができると思われます。
本連載では、染み込んだ財産評価基本通達による評価の先入観から離れて、相続の場面における土地評価を考察してみることとします。