「キャピタルゲイン」=不動産の売却益
では、不動産投資を行うことによって具体的にどのような収益を得ることができるのでしょうか。
大きく分けると、「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」の2つをあげることができるでしょう。
キャピタルゲインは、不動産が値上がりしたときに売却することで得られる利益(売却益)です。例えば1000万円で購入した不動産が2000万円になったときに売れば1000万円のキャピタルゲインを得られるわけです。そして、売却して利益を得た時点で利益は確定し、投資は終わりを迎えます。
「インカムゲイン」=不動産賃貸の収益
一方、インカムゲインは不動産を賃貸することによって得られる利益です。2000万円で購入した不動産を人に貸して年間で100万円の家賃を得られる場合、20年間、貸し続ければ、最終的に2000万円のインカムゲインを得られます。インカムゲイン、家賃収入で投資の元を回収したのちは、賃借人が付いて家賃が入り続ける限り、その家賃が安定的な収益となり、生活を手助けしてくれます。
このインカムゲインが収入を得る仕組み作りになります。後に詳しく説明しますが、融資を借り入れた場合も、その返済は入居者が支払う家賃で行い、かつ自己資金による投資も加えて早期に自分自身の資産を作り上げていくことができます。
不動産から獲得できる利益にはこうした2つの側面があるわけですが、年金の不足分をカバーするために不動産投資を行うのであれば、基本はインカムゲインを重視すべきであり、キャピタルゲインは狙う必要は、私はないと思っています。売却した利益でさらにもう一件、さらに大きな物件というチャレンジを勧める指南書があったり投資家がいたりしますが、我々はあくまでも売却せずに保有を続けることを奨励します。
インカムゲインを目的に不動産を持ち続ければ確実に安定した利益を上げることができます。それこそ、5年、10年ではなく、20年、30年、40年、50年と子供の代、孫の代まで持ち続け、その間、継続的に家賃収入を得ることができるのです。そして代変わりの過程の中で相続税対策として大きなメリットを発揮してくれるのも「賃貸で人に貸している不動産」ならではの特権です。
一方、キャピタルゲインは必ず得られるとは限りません。キャピタルゲインは、買った不動産が値上がりすることを前提にしています。当然のことですが、不動産の価格は上がるときもあれば、下がるときもあります。
そして、確実に上がるかどうかは、不動産の専門家でも100%予測することができません。つまり、キャピタルゲイン狙いの不動産投資はバクチの要素がとても強くなるのです。値下がった場合の収支計画が立てづらく、また本書で取り上げている「目標」達成に対しての路線がズレる可能性がとても高いので先ほど述べた「スタート」からつまずく原因にもなります。
プロでも扱いが難しい「キャピタルゲイン目的」の商品
ちなみに、株式や投資信託のような典型的なキャピタルゲイン目的の投資商品は、プロですら利益を上げることが簡単ではないといわれています。例えば、目下、地方銀行が収益確保のために株式や投資信託などの有価証券の運用に力を入れているところですが、多額の損失を出して経常赤字に陥るなど運用に失敗している銀行も少なくありません。
また、仮にキャピタルゲインを獲得することに成功したとしても、長い目でみればインカムゲインを得続けるほうが得策となる場合がほとんどでしょう。
例えば、年間80万円の家賃収入が入る投資用不動産を1700万円で購入し5年後に1900万円で売却して、200万円のキャピタルゲインを得たとします。しかし、その物件から手取り収入で毎年80万円を得られるのであれば、5年間持ち続けるほうがより多くの利益を得られるはずです。しかも、その5年間が過ぎた10年後、15年後も、物件を持ち続けている限りずっと賃料収入を得られるのです。
賃料収入を半永久的にもたらしてくれる投資用不動産は、極端にわかりやすくいえば、振ればお金を生み出す打ち出の小槌のようなものです。当初購入した目的意識を忘れ目先の利益に目を奪われて、それを手放せば、のちのち悔やむことになるかもしれません。
投資用不動産で成功するためにはあくまでも超ロングリターンを狙うのがよいでしょう。