上場直後の「値動きが荒いとき」は手を出さない
IPOというと、公募価格で買って初値で売る、というイメージがあるかもしれません。一般的には初値売りでいかに儲かるかということに注目が集まります。しかし、公募価格での入手というのは簡単にできるものではありません。裁量配分と抽選配分の2種類がありますが、どちらもハードルは高いです。
前者は証券会社が任意の顧客に割り当てるものですが、主幹事(IPOを主導するため、割り当てられる株が多い)案件の多い某証券会社では、金融資産5,000万円以上を保有していることが第一条件。後者は完全に公正な抽選で、案件によって倍率は1%に満たないこともあります。
しかし公募価格にこだわる必要はありません。上場すれば買う機会はいくらでもあります。ヤフーしかり、業績が伸びて人気も出やすい会社は上場後に株価は上昇していくので遅いことはありません。
注意すべきなのは、上場直後の値動きが荒いときに手を出さないこと。市場の注目を集めるため、上場後の銘柄には短期の投資家も参入してきます。そのため業績とは無関係に価格だけが乱高下してしまいやすいのです。高値づかみの危険がありますし、価格にふりまわされることは短期投資を目的にしないひとにとって精神衛生上よくありません。
上場後しばらくして値動きが落ち着いた頃が、IPO投資における買いのチャンスです。特に初値買いは、よっぽど会社の将来に自信がない限りやるべきではありません。何も慌てる必要はなく、しっかりと情報を集めたうえで、納得した企業に投資してください。その企業が何をやっていて、どのような顧客を持ち、業務に将来性はあるのか。こういったことを丹念に調べていく必要があります。
4ヶ月で3.9倍になった「グレイステクノロジー」の例
直近の成功事例として、グレイステクノロジー〈6541〉を挙げます。2016年12月に上場して、初値は1,783円。購入したのは翌1月末で、初値を上回る1,900円くらいでした。6月には7、420円をつけたので、4ヶ月で3.9倍になったことになります。
購入の決め手は、販路の拡大です。この会社は、製造業が現場で用いるマニュアルをクラウド化する事業を手がけています。主要顧客は工作機械大手のファナック。商品のマニュアルは膨大な量になるため、紙で提供すると少しの仕様変更でも大量のページを印刷する必要があります。グレイステクノロジーのようにクラウド化すればその必要はなく、コピー&ペーストで済ませることができます。
その結果、顧客は数億円単位の印刷代が減らせる。まさに世の中に必要とされている企業というわけです。しかも、グレイステクノロジーにとっても紙の売り上げよりもクラウドのほうが利益率は高いため、業績が右肩上がりに伸びていきます。販路がファナックに集中しすぎていることが懸念材料でしたが、他の製造業大手も興味を示しているという情報があったため、購入に踏み切りました。
[図表]グレイステクノロジー<6541>