中長期の値上がりが期待できる「地味に見える銘柄」
IPO銘柄は数ヶ月という短期で株価が何倍にもなることが珍しくありません。なぜなら比較する他社が少ないので、評価されやすいからです。例えば2016年11月に上場したWASHハウス〈6537〉。防犯性に優れたコインランドリーの会社です。フランチャイズ化して店舗網をどんどん広げているようです。2017年3月上場のインターネットインフィニティー〈6545〉は、介護事業を行っていますがそれだけなくスポーツ指導者などによるリハビリサービスを提供。こちらもフランチャイズで勢いを拡大しています。コインランドリーの会社で上場しているのは現在WASHハウスだけ。このようにユニークな会社の株価が、上場して数ヶ月で2倍、3倍となっています。IPOにはダイヤの原石がゴロゴロしているのです。
ただし、宝石だけではなく石コロも転がっているのは事実。IPOの中には、上場すること自体が目的となってしまっている会社があります。創業者利益を手にしたり、ステータスを得たりするためです。そのため業績がふるわなく、株価は低迷します。このような会社は上場ゴールと呼ばれます。特に社歴も業態も古く、「今さら感」のある会社は要注意です。判別するのは難しいですが、上場の目的を株式投資の情報サイト「トレーダーズ・ウェブ」や業界紙「株式新聞」などの第三者機関が評価していることがあるので参考になります。
歴史のある会社でも、業績向上が期待できる会社であれば、むしろ投資妙味があります。カルビー〈2229〉やサントリー〈2587〉、リクルート〈6098〉などが上場した際には何をいまさら、という冷ややかな声もありましたが、全て初値で買ったとしても大きなリターンを生んでいます。
再上場案件もおすすめです。最近でいえば、いったん上場を廃止し、2017年3月に再上場した調査会社のマクロミル〈3978〉。公募価格1,950円に対して初値は1,867円と振るわなかったのですが、その後は7月末時点で2,497円と堅調に伸びています。マクロミルは海外のファンドによる買収で上場を廃止し、経営を改善。再上場したらそのファンドが売ることが明らかでした。そのため初値が抑えられ、急騰することもありません。そのうえ満を持して上場しているので、業績にも安心感があります。需給でいえば、短期投資家には人気がなく、長期投資家の需要で買われるわけです。こうして徐々に買いが集まり、結果的に株価が上昇したということになります。
有名企業や再上場の案件はIPOとしての注目度は低くなりがちですが、実はこういった地味な銘柄にこそうまみがあるのです。公募価格に対して初値は大きく上回りにくいのですが、上場後に買う場合は取り組みやすく、中長期での値上がりが期待できます。
「注目度の高い銘柄」は売買するタイミングに注意
反対に、小型で注目度の高い銘柄ほど要注意です。
2015年には野村證券が主幹事会社として力を入れたゲーム会社のgumi〈3903〉が急落し、未だに上場時初値の半値以下です。最初の期待が強ければ強いほど、初値がイベントのようになり、上がり過ぎてしまう。結果、それ以上の上昇が難しくなる。注目度が強いほどこの危険性は高まります。公募価格で入手できればしめたものですが、そうでないなら安易な参入は避けるべきです。今年(2017年)はフリーマーケットアプリのメルカリの上場が期待されていますが、売買するタイミングには注意が必要です。
IPO自体があまり注目されていない時期も、上場後に参入するひとにとってはチャンスです。一般的に初値が公募価格を上回ることが多い時期には、IPO神話が形成され、ブームの様相を呈します。すると初値買いで参入するひとが増え、価格が乱高下しやすい。そうすると買うタイミングが難しくなります。理想は公募価格がおさえられ、初値はそれより少し高く、そこから徐々に上がっていくという展開です。
イワキポンプ〈6237〉は化学工場向けのポンプなどを製造している会社ですが、一般の投資家からすると事業内容が地味ということもあり、公募価格2,000円に対して初値は2,050円でした。しかし高い安全性が問われる業界で高い技術を持っており、業績は手堅く伸びているため、株価も堅調に推移しています。初値が高くなくても、あるいは公募価格を割れても、業績のいい会社は株価も伸びるのです。また、なぜか複数の会社が同じ日に上場することがあり、そのようなときは資金が分散するので初値が下がりやすくなります。そのため比較的買いやすくなることがあります。