今回は、銀行に「決算書の内訳明細」を安易に見せてはいけない理由を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

他行の金利まで「まるわかり」になると・・・

「借入金の金利一覧を見せてください。」
とお願いすると、「こうなっています。」と、
決算書の借入金内訳をもってこられることがあります。

 

「えっ、これって決算書の内訳明細ですよね。」
「そうです。」
「ひょっとして、このページも銀行に渡しているんですか?」
「渡しています。お願いされるので。」
「そんな、お願いされたらなんでも出すんですか?
 こんなことしたら、
 他行の金利まで、まるわかりじゃないですか!」
というやりとりになるのです。

 

こんな場合、複数の銀行から借りていても、
各銀行でさほどの金利差はつきません。
当然です。
銀行同士がお互いに手の内を見ながら、
暗黙の協調関係を保っているのです。
加えて、金利が極端に下がることもありません。
なので、往々にして、このような状況下では、
金利がいまどき1%台後半で推移している、
などということが起こるのです。
で、
「どうしてこの良好な財務内容で、金利がこんなに高いんですか!」
ということになるのです。

 

つまり、決算書の借入金の内訳明細に、
金利の率を書かないでほしいのです。
と同時に、内訳明細まで安易に提出しないでほしいのです。
銀行から提出してくださいと言われたら、
なんでもかんでも出さないといけない、と思っておられる方が、
今もおられるのです。

決算書の内訳明細は、銀行にとって「おいしい情報源」

スコアリング(格付け)のためなら、
借入金の明細までは必要ありません。
損益計算書と貸借対照表があれば、可能です。
特別な理由がない限り、
スコアリング(格付け)のための数字がわかる資料で、
十分なのです。
なんでもかんでも提出しすぎなのです。

 

「損益計算書と貸借対照表はわかりますが、
内訳明細まで、何のために必要なんですか?」
と言ってほしいのです。
で、そう言うと、銀行はつぎのように切り返すはずです。
「本部のルールでそうなっておりまして…。」
そこで「わかりました。」となってもいけないのです。
「それはおたくのルールであって、
 むやみに決算書の内訳まで外部に出さないのが、わが社のルールです。」
と、突っぱねてほしいのです。
銀行に頭を下げる、銀行サマサマ病になってはならないのです。

 

銀行にとって、
決算書の内訳明細は、情報の宝庫です。
儲けの種を見出す、おいしい情報源なのです。
そんな大事なものを、安易に見せないでほしいし、
銀行別の金利まで、内訳明細に書かないでほしいのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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