上場日の初値で売る戦略が一般的だが、実際の勝率は?
IPOといえば、公募・売出し株を購入して、儲かる手法として取り上げられることが多いようです。ここではまず、その戦略で実際にどれくらい儲かるのかを見ていきましょう。
下の図表を見てください。この図表は、2000年~2017年7月末までの国内IPO銘柄のすべてを公開価格で1単元購入して、初値で売却したときに得られたキャピタルゲインの総額を、年度ごとに記載したものです。
例えば2000年であれば、203件のIPOがあって、初値が公開価格を上回った件数が131件、下回った件数が56件、公開価格と初値が同値だった件数が16件でした。
初値が公開価格を上回った率を勝率としています。2000年の勝率は64.5%となります。また、図表中の「平均初値騰落率」は、初値の公開価格からのアップ率の平均値で、2000年は約3社に2社が勝ったものの、18%しかアップしなかったことになります。
[図表]IPO株の勝敗一覧(2000年~2017年7月末)
かつては庶民の手に届かなかったIPO投資だが・・・
仮に2000年公開の203銘柄すべてを1単元ずつ公開価格で購入し、初値で売却したとすると、およそ8852万円のキャピタルゲインを得られたことになります。1銘柄平均では43万6000円です。
それが2005年になると、初値が公開価格を上回ったのは158銘柄中151銘柄と、勝率は95.5%まで上昇しました。
また、初値騰落率は134%と2000年に比べておおよそ7倍になったにもかかわらず、158銘柄すべてに投資した場合のキャピタルゲインは8443万円、1銘柄平均で53万4000円と、2000年とあまり大きく変化していません。勝率も初値騰落率も大幅に上がっているのに、1銘柄当たりのキャピタルゲインの額がわずか10万円しか変わらないのはどうしたことでしょうか?
この背景としては、1単元当たりの投資額の大きな変化がありました。2000年といえばネットバブルの末期ですが、当時のIPO銘柄の1単元投資額は、楽天3300万円、オンザエッヂ(のちのライブドア)600万円、サイバーエージェント1500万円、クレイフィッシュ1320万円などです。
楽天は3300万円の公開価格に対して初値は1990万円と、公募株を購入して初値が付くまでの、ほんの1週間程度で1310万円の損失を出しました。今考えれば、1銘柄で1000万円以上の損失が出るかもしれない投資をするなんて、とても一般庶民の投資家には無理な株式投資だったのです。