直前のIPOから1週間以上の間が開いた初値は⁉
初値売り戦略の効率をもっと高めたいと考えるならば、久しぶりのIPOを狙うことを考えましょう。
2016年の平均初値騰落率72%(→第1回 図表参照)に対し、下の図表1を見ると、直前のIPOから1週間以上の間が開いているIPOの初値では、平均値が117.8%と平均を上回っています。直近のIPOから約2カ月開いていたはてな(3930・マザーズ)の初値騰落率は278%、55日のアトラエ(6194・マザーズ)は135%、ホープ(6195・マザーズ)は130%、17日のフィル・カンパニー(3267・マザーズ)は205%、12日のカナミックネットワーク(3939・マザーズ)は186%、という具合に、久しぶりのIPOでは初値騰落率が高くなる傾向があるのです。
[図表1]IPOの間隔が10日以上空いていた12銘柄(2016年)
一方、間隔が短い場合はどうでしょうか? 前のIPOから1日も間が開かずに、連日のIPOとなった31銘柄の平均初値騰落率は52.4%と、2016年の平均初値騰落率72%よりも低いのです(→図表2参照)。銘柄としての人気が高く、初値騰落率が100%超になった銘柄も7銘柄ありますが、初値騰落率がマイナスの銘柄も7銘柄あります。
[図表2]IPOの間隔が1日も空いていなかった31銘柄(2016年)
IPOで1週間以上間が開いた場合と、1日も間が開かない場合では平均で初値騰落率が65%も違うのです。証券会社に無理をいってIPO株を買わせてもらうとするならば、どちらを選択すればキャピタルゲインが大きくなるかは明白でしょう。
なぜIPOの間隔が長いと「初値が高騰する」のか?
では、なぜIPOの間隔が開くと初値が飛ぶのでしょうか? 某ネット証券の関係者から聞いた話では、アベノミクスが始まって以降、IPO投資で儲けやすい環境となり、引受シェア1%で数十名程度の投資家しか買えないことがわかっている場合でも、ブックビルディングに数百億円もの資金が積み上がっていることが多々あるそうです。これらの資金のほとんどは、IPO株の公募・売出しを買えませんから、そうした投資家の資金が上場日に一気に初値を追って流れ込むのではないか、ということです。
IPO株についてはこの循環が1年中起こるのですが、IPOが連日続くとその数百億円の資金が複数の銘柄に分散され、1つの銘柄に入ってくる資金量が減ることが、連日のIPOでは初値が上がりにくくなる一因でしょう。逆に、間隔の開いたIPOの場合は、資金が集中して初値が上がりやすい要因となります。
また、上場初日にはデイトレーダー向きの相場が起こり、足の速い資金が急激に集まってくることも要因としてあるでしょう。2016年にIPOした83銘柄の初値をすべて買って、当日の高値で売ったとしたら、初値に対する上昇率の平均値は9.8%でした。
先の一覧にあった、IPOの間隔が開いている日数第1位銘柄のはてなは初値3025円、高値3355円で+10.9%、第2位のアトラエは初値1万2720円、高値1万4500円で+14%でした。両銘柄ともに初値騰落率が高いにもかかわらず、初値が付いた直後に買いが入り、さらに10%超上昇しています。
このことからも、相当な資金が上場当日にIPO銘柄に入ってきていることが伺い知れます。既上場の銘柄に、1日のうちにそこまで値が動く銘柄はほとんどありません。IPO株の上場当日においては、それだけ株価が動くという経験則があることから、そのボラリティを狙って多くの投資家の資金が集まってくるのです。