初値で売るなら「調達額の少ない銘柄」を選ぶ
前回の続きです。
調達額が少ない銘柄は初値が飛びやすいという、前回とは逆のパターンも覚えておくべきでしょう。
2016~2017年前半の全銘柄のうち、調達額が7億円未満の35銘柄を見てみると、平均初値騰落率は154.4%と、同期間の全銘柄での平均初値騰落率の約2倍になっています。調達額が少ないということは、それだけ公募、売出し株数も少ないということですから、需給が非常にタイトになりがちです。その結果として、初値が飛ぶことにつながりやすいのです。
従って、もし証券会社からIPO株を勧められたときには、迷わず調達額が少ない銘柄を選ぶべきです。
逆に調達額が大きい銘柄に関しては、配当や優待などの有無を確認し、個人投資家にも人気になるかどうかを吟味することが肝心で、人気になりそうにない銘柄はお断りする勇気も必要かもしれません。
ただし、そこはバランス感覚が必要で、店舗証券の場合には儲からない大型IPOの銘柄も付き合いで買うからこそ、大儲けができる小型のIPO銘柄も割り振ってもらえる、という可能性があります。大型株はあまり儲からないとはいえ、初値騰落率が2桁のマイナスにまでなることはまずありませんので、証券会社の営業マンとの関係も考慮しつつ、上手に対処していくようにしてください。
調達額が大きい銘柄は、上場後の底値を待ってから購入
大型株で初値が低くついても、少なくとも公開価格を上回っていれば、時間の経過ともに下値を切り上げることがあるのですが、それとはまったく逆の展開になったのが、2016年11月にIPOしたバロックジャパンリミテッド(3568・東1、以下バロック)です。
バロックは275億円という比較的大きな資金調達を行いました。上場当日の値動きは、公開価格2000円に対して初値1900円、高値1903円、安値1705円、終値1710円でした。このように初値が公開価格を下回って寄り付くと、個人投資家の狼狽売りが殺到します。その狼狽売りが終わらない限り、株価は反転しないと考えるべきでしょう。
バロックの場合も、上場翌日から10営業日の間、投資家の売りが続いて下げ続けました。その後、いったん株価は戻しますが、2回目の底が入ったのは12月15日でした。なんと上場日から1カ月半も下げ続けたのです。しかし、ロックアップ期間が180日と設定されていたため、さらに下げ続けて翌年、2016年4月に上場後の本当の底値を入れました。ここまで下げて、ようやく需給的に見て売りたい既存株主は売り切ったとの見方が市場に流れ始め、業績を見ながら買いを入れる投資家が出てきたのです。
まとめると、資金調達額が大きい東証1部上場銘柄の公募・売出し株を買って、初値売りで儲けることは、その性質上かなり難しいということです。また、いったん公募割れとなった大型株を保有し続けると、需給もしくは業績の見通しが改善しない限り株価は反転しないため、塩漬けとなる覚悟が必要です。
資金調達額の大きな銘柄については、公募株を買うのではなく、上場した後に株価が底入れしたのを確認してから買っても遅くないと言えるでしょう。証券会社の営業マンの甘い誘いに、安易に乗ってはいけないということです。