平均初値騰落率がもっとも高いのは「マザーズ市場」
初値騰落率を分析すると、上場市場によって差があることもわかります。下の図表1は過去5年間の2013年、2014年、2015年、2016年、2017年(8月10日まで)のデータをまとめたものですが、これを見ると、上場したIPO株の平均初値騰落率が平均してもっとも高いのは、東証マザーズ市場であることがわかります。
なおこのうち2013年だけは少し特殊で、先にも述べたようにいわゆる「アベノミクス相場」で、日本の市場に上場しているほとんどの株式の価格が、大きく上昇した年でした。そのような環境のときは、新興株式市場の東証マザーズとJASDAQで、さほど差が出ていません。
しかし、市場環境が少しでも弱含んできたときや、膠着状態になったときには、市場間で初値騰落率に大きな差が出やすいのです。
より具体的に分析するため、以下に2015年、2016年、2017年(8月10日まで)のIPO銘柄を、上場市場別にまとめて掲載しておきます。公開日、コード、公開価格、初値、騰落率を表示し、騰落率については平均も出しています。
[図表1]2013年~2017年※市場別初値騰落率
[図表2]2015年IPO 市場別銘柄一覧 マザーズ
[図表3]2015年IPO 市場別銘柄一覧 JASDAQ
[図表4]2015年IPO 市場別銘柄一覧 東証1部
[図表5]2015年IPO 市場別銘柄一覧 東証2部
[図表6]2015年IPO 市場別銘柄一覧 その他
[図表7]2016年IPO 市場別銘柄一覧 マザーズ
[図表8]2016年IPO 市場別銘柄一覧 JASDAQ
[図表9]2016年IPO 市場別銘柄一覧 東証1部
[図表10]2016年IPO 市場別銘柄一覧 東証2部
[図表11]2016年IPO 市場別銘柄一覧 その他
[図表12]2017年IPO 市場別銘柄一覧 マザーズ
[図表13]2017年IPO 市場別銘柄一覧 JASDAQ
[図表13]2017年IPO 市場別銘柄一覧 東証1部
[図表14]2017年IPO 市場別銘柄一覧 東証2部
[図表15]2017年IPO 市場別銘柄一覧 その他
チャンスがあるのは「セールスされない」小型IPO株
こうしたデータを細かく見れば、東証マザーズのIPO銘柄はなんとしても手に入れなければならない! という気持ちになるでしょう。店舗証券との取引がある場合、東証1部の大型株のIPO銘柄についてブックビルディングにも参加していないのに電話がきて、「ご購入をご検討いただけないでしょうか?」などとセールスされることがよくあると思います。
しかし、セールスされるIPO株は人気がないということ。
加えて、東証1部などの大型IPOでは、市場で流通する株数が多いので、上場当日に売りに出る株数も半端なく多いはずです。需要と供給を考えれば、株式市場へ供給される株数が少ない銘柄のほうが、初値には圧倒的に有利です。
このように考えると、証券会社からセールスされることのない、小型のIPO株にこそチャンスがあるといえます。そして、大抵はそれが東証マザーズの株なのです。