市場の「モメンタム」をどのように測るか?
2003年ごろになって、取引所の指導もあって1単元50万円未満で投資できるように括り直しがありました。同時にインターネット常時接続の時代がやってきて、リアルタイム株価を手にした個人投資家が低いリスクでIPO株に投資できるようになったことで、勝率と初値騰落率が一気に上昇することになったのです。
時は小泉政権の時代で、郵政民営化で総選挙に大勝した自民党が規制緩和を推し進めると考えた外国人投資家の買いも入り、新興市場を中心に株価が大きく上昇。IPO株の初値も2000年以降最高の水準となったのが2005年でした。
ところが2006年になると、1月にライブドアショックが起こり、新興株は決算数値が不透明であるとして、大きな調整を余儀なくされました。
東証マザーズ指数は2800ポイントから、2年後にはおよそ10分の1の300ポイントにまで下落しました。さらに2008年のリーマンショックの年には、勝率が40.8%、平均初値騰落率が18%にまで落ち込み、投資家の新興株式市場とIPO株離れが加速しました。
このことが暗示するのは、市場のモメンタム(勢い)が低下すると、新興市場に上場する株式に向かう資金が枯渇するということです。新興株式市場は個人投資家中心の市場であるため、ボラティリティが高く(値動きの幅が大きく)、かつバリュエーション(投資の価値・経済性)が高い株式を信用取引で買っている人が多いために、株価が下方に一方通行になってしまうと、信用取引の追証づくりのために売り一辺倒になる傾向があります。
このような状態では、公開価格で買って初値で売る戦略さえも機能しなくなるケースがあるので、IPO投資そのものを手控える必要が出てくる場合もある、ということです。
では、市場のモメンタムをどのように測るかですが、これは市場の売買代金の増減トレンドを、しっかりとウォッチしておくことが肝要でしょう。
「公開価格の大きさ」で選ぶほうがチャンスが高い理由
直近の2016年の初値売りでは、どのような銘柄が儲かっていたのかを見ておきましょう。2016年のIPOは83件。その中の初値騰落率のトップ10とキャピタルゲインのトップ10は、それぞれ、以下の図表1,2のとおりです。
[図表1]2016年IPO 初値騰落率の高かった銘柄トップ10
[図表2]2016年IPO キャピタルゲイン額の高かった銘柄トップ10
初値騰落率1位でキャピタルゲインも1位だったのは、インターネット上で就活・転職口コミサイト「キャリコネ」を運営するネットベンチャーのグローバルウェイ(3936・マザーズ)でした。キャピタルゲインは1単元の売買で110万円と、2016年で最大のIPO銘柄でした。
ただし、ここで気を付けなければならないことは、初値騰落率とキャピタルゲインの額の関係です。初値騰落率が高いからといって、キャピタルゲインが大きいかというとそうでもないことを、このトップ10の一覧からは読み取ることができます。
キャピタルゲインの計算は、(初値-公開価格)×単元株数です。最近は取引所の指導もあって、単元株数はほとんど100株ですので、①公開価格の絶対値が大きくて、②騰落率が高い銘柄のキャピタルゲインが大きくなります。
実際に、初値騰落率トップ10とキャピタルゲイントップ10を比べてみると、必ずしも騰落率が高い銘柄が上位にきているわけではありません。例えば初値騰落率で第2位のはてな(3930・マザーズ)は、キャピタルゲイン額の順位では16位でトップ10から外れています。
従って、公開価格で買って初値売りで儲けるなら、公開価格の大きいものを選んだほうが、結果として大きく儲かるチャンスが高いといえます。