好調に推移してきた米国株式市場だが、2月2日、5日と連続して暴落した(6日は反発)。今回は、その要因と、米国株式相場の今後の見通しについて考察する。

株価上昇をもたらしてきた「3つの要素」に変化

2月2日に続いて2月5日も、米国株式相場は大幅続落し、ダウ工業株30種平均は1175.21ドル(前日比4.6%)下げて24345.75ドルで引けた。日中では一時1600ドル近く下げる場面もあった。S&P500種株価指数も同様に、前週末比4.1%安の2648.94(ニューヨーク時間午後4時の暫定値)まで下げた。両株価指数とも、この水準は、年初来の上げを帳消しにした水準である。

 

株価の上昇をもたらしてきたのは、

 

1)米国内外の景気の勢いの加速期待

2)米税制改革を背景とした企業業績の一段の上振れ

3)低金利の継続

 

この上記3つだったと筆者は考えている。しかし、1)’ 堅調に推移する世界経済をほぼ織り込み、2)’ 税制改革の影響による企業業績の上振れは、期待できる部分はあるものの、上振れも下振れもあり得る、3)’ 米長期金利は、年初の2.40%近くから、先週終わりには2.84%までわずか1か月の間に急上昇していた。

 

 

先週、2月2日に発表された米国1月雇用統計でも確認された通り、労働市場の引き締まりが継続する中、財政政策が景気刺激策として発動されることになると、求職者の不足から、賃金上昇の予兆も垣間見え、物価上昇懸念から金利上昇のシナリオが見え隠れし始めた。緩やかな成長と低インフレによる物価の安定という適温経済(ゴルディロックスシナリオ)の継続という株価を支えてきた前提が揺らぐことに他ならないのである。

 

加えて、FRBに加えてECBも量的金融緩和政策からの出口戦略を推進しているが、これはリーマンショック後にばら撒かれてきたマネーの量が縮小に転じるということでもあり、要注意な出来事であると、筆者は指摘してきた。

 

また、シンボリックな要因に過ぎないとはいえ、この2月、イエレンFRB議長は去り、パウエル新議長が就任した。2018年のFRBの金融政策の舵取りは、相当に難しいものになるだろうと、かねてより指摘しているが、市場もその難しさを嗅ぎ取り始めたのではないか。以上のことが相まって、長期間、じり高更新相場を形成してきた楽観論にも変化が出てきたのであろう。

「税制改革の成果」だと発言するトランプ大統領だが…

さて、CBOEで取引されるボラティリティー指数(VIX)は2月5日、2日終値の2倍強の38.80を付けた後、37.32で引けた。これは、2015年8月以来の高水準で、1日の上昇としては過去最大を記録した。

 

VIXの1990年以降の平均は19.3であるのに対し、過去3年間の平均は13を下回り、ここ数年は歴史的に低いボラティリティー水準にあった。楽観的な相場つきは一変し、当面は慎重な参加者が増加するのではないだろうか。

 

2月5日、トランプ大統領はオハイオ州で演説し、税制改革は「好材料の大波動を引き起こした」と語ったが、流石に株式相場については言及しなかった。この2営業日の株価大幅下落でも、大統領就任時からは株価はまだ大きく上げた水準である。確かに、トランプ政権1年目で、米国経済は拡大を続けた。

 

しかし、気の毒ではあるが、この株価急落だけを挙げても、財政・金融政策の舵取りはますます難しくなったと言えるだろう。

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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