株価安定の鍵を握るのは「物価上昇懸念」の払拭
2月に入り、米国株式相場は波乱の相場展開となった。筆者は先月、緩やかな成長と低インフレによる物価の安定という適温経済(いわゆる「ゴルディロックスシナリオ」)の継続という株価を支えてきた前提が揺らぎ、株価の高値警戒感が強まる可能性を指摘していた(当コラム「香港発!グローバル資産防衛のためのマーケットウォッチ【第25回】 ゴルディロックスシナリオは終焉!?」2018年1月14日を参照)。
今回の米国株の急落は、企業業績の悪化や景気の失速懸念が理由ではなく、米国経済は引き続き好調であること、米国での減税と財政刺激が実行に移されることで、物価がこれまでの想定を超えてきたことで、長期金利が上昇に転じたことが引き金である。
また市場参加者がモラトリアム的に「適温相場」シナリオに浸りきっていたために、ひとたび市場が売りに傾くと一気に売り圧力が増幅したことと、その継続を見込んだボラティリティー指数のショート(売り)ポジションが積みあがっていたために、一気に反対売買を余儀なくされたことで、相場の振れが増幅した側面もある。エコノミストの多くも、米国景気の拡大観測そのものを否定しているわけでもないし、程度の問題はあっても金利の先高感が払拭されたわけでもない。
つまり、これまでのように株式市場がじり高で高値を更新していくような相場ではなくなったといえるが、株式市場が下降トレンドに入ったとも言い難い。ダウ平均は24,000ドル台を割り込み、高値から3,000ドル程度下げる局面もあったが、前述のように米国経済の拡大が継続するというシナリオに立てば、ここから売り相場を想定するのは悲観的に過ぎる。
相場の鍵は、前述の通り、物価上昇懸念がどう消化されていくかである。次回の2月米雇用統計(3月9日発表)で、時間当たり賃金の動向が注目されるが、これにより、FRBの利上げ路線に、ある程度のコンセンサスが得られ、債券市場が落ち着きを取り戻すことが、株価安定への最良のシナリオとなるだろう。そういう意味では、株式・債券市場とも、2月は落ち着きどころを探る神経質な展開にならざるを得ない。
アジア株が底堅さを見せるなか、「日本株」の動きは…
やや心配なのは、日本株の動きである。米国株に引っ張られる形で、2017年第4四半期一気に上昇センチメントに乗った日本株だが、「円高」に振れたこともあり、相場の雰囲気は一気に弱まった。アジア株も、米株の調整に連れ安となったものの今週に入ってから比較的、底堅さを見せている。米株もアジア株も、市場には冷静さを取り戻しつつあるのである。
その中にあって、日本株の弱さは気掛かりなところである。確かに、「円高」はようやく頭を上げ始めた日本経済にとって、非常に痛い要因である。しかし、筆者は、現在の円高は、そう長くは続かないのではないかと考えている。為替については、次回に記載するが、米株やアジア株の下げ止まり感が醸成されつつあり、日本株の調整も、そう深くはならないのではないかと考えている。