AIが最も力を発揮できる「パターン検知」の分野
前回の続きです。
もう少し詳しくAMLシステムを見てみましょう。大きく2つの構成要素があります。
一つは、モニタリングシステムと呼ばれるもので、勘定系システムや国際系システムから取引データを受けて、疑わしい取引が発生していないかを検知するシステムです。
事前に疑わしい取引の検知パターンを設定しておく必要があります。日本では、金融庁が「疑わしい取引の参考事例」を公表しており、参照することが可能です。
疑わしい取引を発見したら、所定フォーマットで所轄官庁に届け出る必要がありますが、この届け出を自動生成する機能もあると便利です。
もう一つは、フィルタリングシステムと呼ばれるもので、口座所有者や送金人、受取人が要注意人物に該当するかどうかをチェックするシステムです。表記漏れや意図的な誤入力に対応するため、あいまいな検索機能が必要となります。
どちらもパターン検知といえますが、これはAIが最も力を発揮できる分野です。
「銀行詐欺対策ソリューション」としてサービスを提供
AML対策を怠った場合のリスクが極めて大きいことや、AMLシステム自体の規模が大きいことから、大手ITベンダーやコンサルティング会社のソリューションが目立ちます。
例えば、IBMは「銀行詐欺対策ソリューション」として一連の製品およびサービスを提供しています。このなかには「Counter Fraud Management for Safer Payments」というコグニティブシステムを活用したソリューションも存在します。
以上はAMLシステム全体を構築するためのソリューションですが、部分的なソリューションも存在します。例えば、先ほどのフィルタリングシステムに対応するものとしては、Socure社のソリューションがあります。
Socure社は2012年、ニューヨークで設立されたセキュリティー関連企業です。「ID+」というAIによる本人確認ソリューションをクラウド上で提供しています。これは、SNS、Webサイト、電話番号、メールなどの個人情報を集めて、機械学習による予測分析を用いて、対象となる個人が本人である確率を見積もるシステムです。
個人認証作業を自動化できるだけでなく、公的な個人情報が限られている外国人なども確認できるといいます。すでに大手金融会社がサービスを利用中で、顧客にはアメリカの大手銀行やクレジットカード会社も含まれます。
Socure社のスニル・マドゥCEOによれば、「大多数のなりすまし防止ソリューションは小売業者や商業店主が対象だが、Socure社のソリューションは大手金融機関を主なターゲットにしている」とのことです。
また、誤検知率も低く、「ほかのソリューションが1人のなりすましを特定するために8~10人に疑いをかけるのに対して、ID+なら2、3人にとどまる」のだそうです。