より難しい「法人融資審査」にAIを活用
個人融資の融資限度枠と金利を決めるのも難しいことですが、法人融資では融資額が大きいことと、判断材料も個人より多岐にわたることからより難しくなります。
ベテランの営業担当者であれば、企業情報や業界情報あるいは口コミ情報から最適な融資提案もできますし、与信もある程度直観的に判断できますが、経験不足の担当者はそううまくはいきません。貸し倒れを避けたいのは当然ですが、将来成長する見込みのある企業をほかの銀行のお得意さまにするのもまた避けたいことです。
そこで、法人融資審査でもAIを活用する動きが出てきています。
広島銀行は2017年2月に、データ受託分析を行うデイタムスタジオと業務提携して、AIを活用した法人融資審査の実証実験を開始したと発表しました。
まず、入出金履歴や財務データと倒産リスクなどとの相関関係を分析して、独自の融資システムを構築します。デイタムスタジオが独自開発したAIに、広島銀行の取引先の入出金、財務、業況データを入力して、過去に債務不履行になった取引先に共通する傾向を抽出し、財務データなどから自動的に融資リスクを判定するシステムです。このシステムの精度を向上させ、機能を追加して実用化につなげていく方針です。
広島銀行は2017年2月6日に発表したニュースリリースで、実証実験の目的を「AIの銀行業務におけるさらなる活用可能性を探るため、審査精度の向上や審査期間の短縮、審査の一部自動化などによる、高付加価値サービスの提供やコスト削減を目指す」としています。
そして今後の方針として「融資業務全般への応用可能性を幅広く検討する」とし、具体的な方針を3つ挙げています。
①審査権限の見直しによるスピーディーな融資審査の実現
②新たな融資商品の開発
③コンサルティング型営業の強化
コスト削減といったいわゆる「守りのIT」ではなく、営業力・商品力を強化し、収益力を高めるという「攻めのIT」活用の典型的な事例となっています。
営業力強化のなかには営業力の底上げと属人化の排除、つまり経験の少ない営業担当者でもベテランに負けない融資実績を上げることも含まれているのは間違いないでしょう。
融資サービスにAIを活用する「3つのポイント」
①融資審査は難しい
融資審査は難しく、リスク対策のために融資限度枠を少なめに、金利を高めに設定す傾向がありますが、リスクを多く見積もりすぎると借り手自体が減ってしまいます。
また個人よりも法人のほうが、融資額が大きく、判断材料が増えることからさらに難しくなります。
②個人融資審査にAIを活用
個人融資審査にAIを活用することで、金利を適正な範囲で低めに設定し、若年層の融資を増やそうという取り組みがみずほ銀行とソフトバンクによって行われています。
個人向け融資は申込件数が多いので、審査の効率化の狙いもあるでしょう。
③法人融資審査にもAIを活用
法人融資審査にAIを活用する実証実験が、広島銀行とデイタムスタジオの業務提携により行われています。目的は、審査精度向上や審査期間短縮、審査の一部自動化などによる高付加価値サービスの提供およびコスト削減です。
営業力・商品力を強化して収益力を向上させるためのAI活用の典型例だといえます。