前回は、銀行経営の大きなリスクとなる「金融不正」を予防するAI活用術を紹介しました。今回は、銀行業務に活用される、AIの「コグニティブシステム」について解説します。

AIによる自然言語処理・傾向分析・学習能力と意思決定

デジタル・リーズニング社は、AIによるコミュニケーション分析で注目されている企業です。アメリカのテネシー州で2000年に設立された会社で、コグニティブコンピューティング技術によるコミュニケーション分析を提供しています。

 

設立直後から軍やCIAといった顧客を持ち、現在はナスダック、アクセンチュア、オラクルなどの大手企業とパートナーシップを結んでいます。

 

コグニティブコンピューティングとはどのような技術でしょうか。

 

主な技術要素は以下の通りです。

 

●自然言語処理

自然言語を処理することが得意。問い合わせ対応や接客業務への応用が期待されている。

 

●傾向分析

SNSの投稿や通販サイトでの購入履歴などから、ユーザーの性格や好みを分析。マーケティングへの応用が期待されている。

 

●学習能力と意思決定

事例を通じて学習し、システムが考えた結果を提示する。

実用化例として知られる、IBMの「ワトソン」

コグニティブコンピューティングの実用化例(コグニティブシステム)としては、IBMのワトソンが有名です。ソフトバンクのPepperと連携していることでも知られているシステムで、IBMのクラウド(Bluemix)で提供されています。

 

「コグニティブコンピューティング」はIBMが提唱した言葉です。AIとどう違うかについて、IBM基礎研究所のダリオ・ギル副社長は「AIは人が行う作業をコンピュータが行うもの、コグニティブシステムは人がより良い作業を行えるようにサポートするものであり、それぞれゴールが違う」と説明しています。

 

ただ、一般的にはAIと同一視されており、IBMも最近ではワトソンをAIと呼ぶようになりつつあるようです。「自然言語処理と傾向分析に強く、自分で学習して意思決定もできるAI」がコグニティブシステムだと考えておけば間違いないでしょう。

 

デジタル・リーズニングは、この自然言語処理と傾向分析に強いというコグニティブシステムの特長を利用して、コミュニケーション分析を提供しているわけです。

本連載は、2017年12月18日刊行の書籍『AI化する銀行』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

AI化する銀行

AI化する銀行

長谷川 貴博

幻冬舎メディアコンサルティング

AIの導入によって日本の銀行が、そして銀行員の働き方が劇的に変化します。単純作業は真っ先にAIに切り替わり、早いスピードと高い精度で大量の業務がさばかれていきます。さらに、属人的な業務でさえも、AIが膨大なデータから…

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