テロリストの追跡や人身売買の捜査に貢献
デジタル・リーズニングのコミュニケーション分析とは、例えば「Apple」という単語が出てきたときに、それが果物のリンゴなのか、iPhoneのアップル社を指すのかを、文脈やニュアンスから読み取る技術です。文脈やニュアンスの読み取り方を、機械学習で習得するのです。
デジタル・リーズニング設立翌年の2001年9月11日に、アルカイダによるアメリカ同時多発テロ事件が発生しました。米国政府はテロリストのネットワークを突き止めるために、デジタル・リーズニングに仕事を依頼し、CIA直下のベンチャーキャピタルIn-Q-Tel社を通して出資もしました。
その後、国防総省や司法当局とも連携を深め、テロリストの追跡や児童人身売買の捜査に協力してきました。
これらの実績が、大手企業とのパートナーシップに結びついているのは間違いありません。
文脈把握の技術により、不正株取引の誤判定率が低下
デジタル・リーズニングは2012年から、ゴールドマン・サックスやクレディ・スイスなどの大手金融機関に、自社の不正防止ソリューションを積極的に売り込んできました。
その結果、2014年にはゴールドマン・サックスをはじめとする金融機関グループから合計で2400万ドルの資金提供を受けることができました。
2016年にはナスダックの不正株取引監視システムの構築を支援しました。トレーダーの取引履歴と電子メール、社内SNS、会話履歴などを比較・分析し、インサイダー取引や株価操作などの犯罪を事前に察知するシステムです。
それまでの監視システムでもトレーダーの会話を監視していましたが、キーワードに焦点が当てられていたため、微妙なシグナルを察知できず、むしろ的外れなアラートを鳴らすことが少なからずありました。
デジタル・リーズニングの技術を使えば、文脈が把握できるので誤認知率が減り、微妙な変化も捕捉できるようになるといいます。実際に、従来のコンプライアンスツールと比較すると、誤判定率が1〜5%程度にまで低下したといいます。
なおAIの学習のベースになるデータは、世界金融危機(リーマン・ショックを発端とする一連の金融危機)やエンロン不正会計事件などの裁判の過程で公開された文書類です。