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その他 経営戦略
連載お金の正体~書籍『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』より【第14回】

高報酬の外資系投資銀行 4~5年でやめる人が多い理由

株式会社メタップス代表取締役社長・佐藤航陽氏の最新著書を試し読み!

お金経済

高報酬の外資系投資銀行 4~5年でやめる人が多い理由

今回は、外資系投資銀行の職員が、数年で仕事を辞めてしまう理由について見ていきます。※本連載では、佐藤航陽氏の著書『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』から一部を抜粋し、「お金や経済とは何なのか?」、その正体を探っていきます。

人々を熱中させるには、報酬系の活性化が重要

前回の続きです。

 

この脳内の報酬系の仕組みをフル活用した装置が、私たちがよく子供の頃に(場合によっては今も)遊んだ「ゲーム」です。優れたゲームほど、適度に私たちの報酬系を活性化させ、人々を熱中させるように作られています。

 

例えば、ゲームのある面を自分の工夫と努力によってクリアし、あなたはボーナスを獲得したとします。その時にあなたは「達成感」と「満足感」を味わい、脳内の報酬系が刺激されて快楽物質が分泌されます。

 

さらに難しい面に挑み、クリアし、さらなる達成感を得ます。より多くの達成感が欲しくなり、やり続けるうちにあなたはこのゲームにどんどん「ハマって」いきます。

 

オンラインゲームの場合は、さらにこれにユーザー同士のコミュニケーションや競争という要素が加わるので、さらに熱中度は高まります。ゲームをクリアしたという達成感だけでなく、仲間とのコミュニケーションで得られる楽しみや、競争での勝利によって満たされる承認欲求など、報酬回路を刺激する要素が盛りだくさんです。

 

ゲームの存在は、目に見える「リターン」がなかったとしても、仕組みによって人間の脳の報酬系は刺激されて快楽物質を分泌し、特定の行為に熱中するようになる証明とも言えます。ゲームを作っている人がこうした脳の仕組みまで理解して設計しているわけではもちろんないと思いますが、結果的にヒットするゲームには、報酬系を刺激する要素が必ず含まれています。

 

つまり、金銭的な対価を一切求めずに、経済システムを作ろうとするとゲームに近づいていくことになります。昨今の優れたサービスや組織が、ゲームの手法を真似た「ゲーミフィケーション」を取り入れているのを見てもわかる通り、ゲームというものが私たちの脳を直接的に刺激する仕組みを凝縮したものであることは間違いありません。

 

現在、先進国ではものもサービスも飽和状態にあり、商品を売るだけでは人々を惹きつけることができなくなりつつあります。

 

物を持たないで生きる「ミニマリスト」が多くなっているのを見てもわかる通り、ものの魅力はどんどん下がっていっています。多くの人が娯楽や体験を通した精神的な満足に対して魅力を感じるようになってくると、ゲーミフィケーションや脳の報酬系への理解が経済活動にますます求められる時代になっていくでしょう。

快楽物質を浴びすぎれば「バランス」を崩す

ここまで読み進めると、脳の報酬回路はまるで万能薬のように思えるかもしれませんが、実際は効きすぎるので「飲みすぎ厳禁」の「栄養ドリンク」と考えてください。また、報酬系から分泌されるドーパミンなどの快楽物質には強い中毒性・依存性があります。

 

アルコール中毒、恋愛中毒、仕事中毒など、何かにハマりすぎて四六時中没頭してそれなしでは生きられなくなってしまった人たちがいます。あれは報酬系がおかしくなってしまった場合に起こる症状です。快楽物質は強力な動機付けを行いますが、その力に頼りすぎるといつか無理が出てきてしまいます。

 

典型的な例に、外資系の投資銀行があります。外資系の投資銀行は就職ランキングで常に上位にあり、実際に入社するのも転職するのもハードルが高いです。ただ、収入は世の中にある職業の中でも最上位に近く、20代でも人によっては年収が億に届く場合もあります。金銭や承認の欲望が最も満たされる職場です。ただ、仕事は激務が多く、案件の成功によって報酬もとんでもなく変動しますし、失敗ばかりしていると普通に解雇されます。

 

市場の変化は非常に激しく、まさに生き馬の目を抜くような環境です。本人たちはかなり報酬系が刺激されてドーパミン等がドバドバ出ている状態だと想像できます。そんな脳が刺激されるような理想の環境でも、4、5年経つと辞めて違うキャリアを選びます。多くの投資銀行出身者に理由を聞くと「精神と身体が持たない」という答えが返ってきます。

 

脳は疲れない器官だとされていますが、脳の司令によって動く身体や、その環境にさらされ続ける精神は間違いなく消耗します。脳は快楽物質の分泌によって喜んで次の行動を指示しますが、身体や心は休息が必要です。

 

快楽物質を浴びすぎればバランスを崩します。格闘漫画などにある、短期的に力が数十倍になるけれど後で「代償」が必ずあるような必殺技のようなものです。

 

何事も適度な量というものが存在するので、もし何かの経済システムを考える立場に読者の方がいる場合は絶対に悪用はせずに、バランスを見ながら適度に報酬系を刺激する仕組みを取り入れてください。

株式会社メタップス 代表取締役社長

福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年に株式会社メタップスを設立し代表取締役に就任。2015年に東証マザーズに上場。フォーブス「日本を救う起業家ベスト10」、AERA「日本を突破する100人」、30歳未満のアジアを代表する30人「30 Under 30 Asia」などに選出。2017年には時間を売買する「タイムバンク」のサービスの立ち上げに従事。宇宙産業への投資を目的とした株式会社スペースデータの代表も兼務。

著者紹介

連載お金の正体~書籍『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』より

 

 

お金2.0 新しい経済のルールと生き方

お金2.0 新しい経済のルールと生き方

佐藤 航陽

幻冬舎

「資本主義」を革命的に書き換える「お金2.0」とは何か。2.0のサービスは、概念そのものを作り出そうとするものが多いので、既存の金融知識が豊富な人ほど理解に苦しみます。その典型がビットコインです。あまりにも既存社会の…

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