▲トップへ戻る
その他 経営戦略
連載お金の正体~書籍『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』より【最終回】

お金・人材・情報が高速回転 米中経済が成長し続ける理由

株式会社メタップス代表取締役社長・佐藤航陽氏の最新著書を試し読み!

お金経済

お金・人材・情報が高速回転 米中経済が成長し続ける理由

今回は、自然を例に、米中経済が成長し続ける理由を見ていきます。※本連載では、佐藤航陽氏の著書『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』から一部を抜粋し、「お金や経済とは何なのか?」、その正体を探っていきます。

自然の構造に近い仕組みは「発展」を続ける

自然を3つの特徴(自発的秩序・エネルギーの循環・情報による秩序の強化)を持つ有機的なシステムとして眺めてみると、全く関係ないように見えるものも、自然と同じような構造で動いていることに気づかされます。

 

生命・細胞・国家・経済・企業まで、いずれも無数の個が集合して1つの組織を作っており、いずれも動的なネットワークとして機能しています。

 

人間は個々の小さな細胞が寄り集まってできており、各細胞や器官は密接に連携してネットワークを形作っています。食料などのエネルギーを外部から絶えず取り込み、情報は脳内や遺伝子に記録されて細胞が入れ替わっても同じ形を維持することができます。

 

国家も同様に個人のネットワークで構成され、各々が連携しながら1つの共同体を維持しています。赤ちゃんが生まれたり移民が来たりと人員は流動的ですが、法律・文化・倫理・宗教などの「情報」によって構成員が変わっても同じ国家であることを認識することができます。

 

興味深いのは、入れ子のような構造が続いていることです。

 

自然の中に社会があり、社会の中に企業があり、企業の中に部署があり、部署の中に人間がいて、人間の中に器官があり、器官の中に細胞があるといった風に。

 

どのスケールでのぞいても同じ構造が続いているようで、まるでロシア民芸のマトリョーシカ人形のようです。雪の結晶が、顕微鏡で見ていくと延々と似た構造の繰り返しが浮かび上がってくることに似ています(フラクタルと言います)。

 

社会ではそれぞれ、違うものとして名前をつけていますが、構造的には、全て同じものとして捉えることができます。

 

[図表]

 

これらの自然に内在する力と、それに似た経済のベクトルの強さを考えると、ある着想が湧いてきます。

 

それは「自然の構造に近いルールほど社会に普及しやすく、かけ離れた仕組みほど悲劇を生みやすい」という視点です。

 

この仮説を証明する典型例が、マルクスの「社会主義」です。

 

資本主義の問題点を指摘して、多くの人の共感を得た思想です。つまり感情のベクトルは捉えていました。しかし、結果的にはうまくいきませんでした。

 

①私利私欲を否定、②政府がコントロールする経済、③競争の否定。

 

つまり、これまで紹介した自然の性質とは正反対の仕組みを採用したことになります。これにより、個人の労働に対する意欲は低くなり、お金も循環しなくなり、やがて社会は活気を失いました。結果的に経済成長率の低下と技術革新の停滞が深刻化したのです。人間で言えば新陳代謝の機能がおかしくなった状態です。

 

自然の性質と遠い仕組みになるほど機能不全を起こすという現象は、国家の競争力でも同じことが言えます。

 

アメリカや中国で商売をしていると、変化が激しく、お金・人材・情報もすごい速度で動いています。特にアメリカは大量の移民を受け入れ、経済も自由競争を推奨し、雇用の流動性も高めることで強制的に新陳代謝を上げて世界最大の経済大国に成長しました。あらゆるものの流動性が高いことに気づきます。

 

一方で、成長が止まった国(例えば日本や韓国)を見ると、資本や人材や情報の流動性は高くありません。つまり、社会の循環が止まっています。大企業はずっと大企業ですし、年功序列と終身雇用が前提、資本や人材の流動性を高めないように設計されています

 

総じて、歴史の大惨事を引き起こした思想の多くは自然の構造とはかけ離れています。現在機能している社会システムは過去の人たちが何千年もかけて試行錯誤を繰り返した結果であり、私たちは今も手探りで「自然の輪郭」を明らかにする過程にあるのかもしれません

 

そして「進化」とは循環を繰り返していくことによって生まれる副次的な変化であり、「テクノロジー」とはその進化の副産物のようなもの、「豆腐を作った時に出てきた湯葉」みたいな存在、と考えることができます。

「普遍性」を見つけられれば、未知の事態にも対応できる

経済の根底には脳の報酬回路がある、そして経済と自然はよく似ている、という話をしました。さらに、実は脳そのものも経済とそっくりな構造をしています

 

人間の脳は神経細胞という特殊な細胞群が互いに結びつき、複雑なネットワークを構築して成り立っています。脳内の神経細胞の数は大脳で数百億個、小脳で1000億個、脳全体では千数百億個にもなると言われています。このネットワークは神経回路と呼ばれ、神経細胞は電気信号を発して情報をやりとりし、細胞同士が繋がったり途切れたりを繰り返しながら組み換わっています。まるでSNSで繋がってチャットしている人々みたいです。

 

経済も自然も脳も、いずれも膨大な個体で構成される有機的なネットワークであり、情報やエネルギーを交換しながら全体がまるで1つの生き物のような振る舞いをします。そして、情報やエネルギーが循環する過程で、構造を複雑化させて進化していきます。自然は土と海しかない状態から植物や生物が溢れる複雑な生態系へ。経済は貝殻を使っていた頃から、資本市場を形成し通貨は社会の中心へ。脳は赤ん坊の単純な脳から、複雑で高度な思考が可能な大人の脳に発達していきます。

 

これらは、私たち人間の感覚からすると「似ている」という表現になりますが、人間的な文脈を無視して、機械がデータとして「構造」のみを分析したら「同じもの」と判断するかもしれません。私たち人間はコミュニケーションを取るためにあるものと他のものを区別して名前をつけます。そうでないと会話ができないからです。

 

規模や外見で区別して人間は「名前」を増やしてきましたが、目に見えない構造を扱うことは苦手です。つまり、人間の認識のフィルターを通して見ると違うものとして区別されているけど、自然や経済や脳はもともと同じ「出発点」にあった存在と考えることもできます。さらに、数十年経つとこのような構造も、テクノロジーの力を借りて、自らの手で作れるようになっていると予想しています。

 

テクノロジーの進化によって、人間の認知能力は向上し、今以上に複雑な構造も直感的に理解できるようになるはずです。そこでは、部分的な法則性だけではなく、無数の個が相互に作用しあうネットワークを全体として理解し、さらに時間の経過による変化までもはっきりとイメージできるような感覚を身につけていると思います。

 

経済・自然・脳のように、複数の個が相互作用して全体を構成する現象は「創発」と呼ばれます。今後はこのような構造を使いこなす「創発的思考」とも言える思考体系が必要になってくると考えています

 

『モナ・リザ』を描いて芸術家として有名なレオナルド・ダ・ヴィンチは、音楽、建築、数学、幾何学、解剖学、生理学、動植物学、天文学、気象学、地質学、地理学、物理学、光学、力学、土木工学など様々な分野で類い稀な才能を発揮し、あまりにも何でもできるので「万能人」と呼ばれていました。ただ、私は彼が多才であったという点では違う考え方を持っています。それは、ダ・ヴィンチには「全て同じものに見えていたのではないか」という仮説です

 

彼が生きた時代は学問は今ほど細分化されていませんでした。ダ・ヴィンチは宇宙や自然を含んだ万物に対する類い稀な探究心と創造性を持っていた人物であり、それが様々な面で発露した結果、彼が多才なように多くの人の目に「映った」のではないかと思います。つまり、彼はこの世界の全てを理解するという「1つ」のことに長けた天才だったのではないかという予想です。彼は著書の中でこんな言葉を残しています。

 

私の芸術を真に理解できるのは数学者だけである

 

私たちからすれば全く関係ないように思える「芸術」と「数学」を、彼は同じものと捉えていたのかもしれません。

 

似た人物に、ニュートン等と並んで「微分」を見つけたゴットフリート・ライプニッツがいます。ライプニッツは数学者として有名ですが、哲学や科学や政治など幅広い分野で活躍した人物です。ライプニッツはダ・ヴィンチとは逆に、すでに存在している様々な分野の学問(法学、政治学、歴史学、哲学、数学、経済学、物理学)を統一して、「普遍学」という1つの学問に体系化しようと考えていました

 

ダ・ヴィンチと同様に、ライプニッツも、これらは切り口は違うが同じものを説明している学問だと認識していたのかもしれません。ただ、あまりにも難解で独特なものの見方だったため、世の中に普及はしませんでした(実際に今読んでも難しいです)。おそらくライプニッツも自分が感じていたことの1割も言語として落とし込めてはいなかったのではないかと想像しています。

 

社会の中で細分化して分類されてきた概念も、違う角度から見ると実際は全く同じ構造が隠れていることが多いのです。この一見異なるものに存在する「普遍性」、共通する「パターン」を見つけられると、未知の事態にも臨機応変に対応できるようになります。

 

ただ、過度のパターン化は危険ですので、ある仮説が思い浮かんだらビジネス等の現実世界に当てはめて「実験」してみることが大事です。現実世界での仮説検証を通じてさらに現実を深く理解できるようになり、また次の仮説が見つかります。

 

私たちがダ・ヴィンチやライプニッツよりもはるかに有利なのは、彼らの時代には存在しなかった様々なテクノロジーを私たちは活用できるという点です

株式会社メタップス 代表取締役社長

福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年に株式会社メタップスを設立し代表取締役に就任。2015年に東証マザーズに上場。フォーブス「日本を救う起業家ベスト10」、AERA「日本を突破する100人」、30歳未満のアジアを代表する30人「30 Under 30 Asia」などに選出。2017年には時間を売買する「タイムバンク」のサービスの立ち上げに従事。宇宙産業への投資を目的とした株式会社スペースデータの代表も兼務。

著者紹介

連載お金の正体~書籍『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』より

 

お金2.0 新しい経済のルールと生き方

お金2.0 新しい経済のルールと生き方

佐藤 航陽

幻冬舎

「資本主義」を革命的に書き換える「お金2.0」とは何か。2.0のサービスは、概念そのものを作り出そうとするものが多いので、既存の金融知識が豊富な人ほど理解に苦しみます。その典型がビットコインです。あまりにも既存社会の…

 

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧