2018年からの3年間の新規供給は、新規需要を上回る
<東京>
堅調な経済環境を背景に、企業業績も好調。グレードアップや立地改善など、前向きな移転需要を見込む。一方、2018年からの3年間の新規供給は新規需要を上回るとみられ、空室率は上昇に転じると予想される。このため東京オフィス市場は、貸し手市場から借り手市場に徐々に移行するだろう。
2017年は、海外景気の回復や円安を背景に、企業業績は過去最高益を更新すると予想されている。設備投資も堅調に推移し、オフィス市場でも館内増床や拡張移転が多くみられた。
一方、失業率は1994年以来の3%割れで、人手不足は深刻さを増している。増員を計画している企業の多くは、従業員の満足度を高め、かつ優秀な人材を確保するために、交通利便性の高い立地や、よりグレードの高いビルへの移転を検討している。なかでも、IoTやeコマースなど市場の本格的な拡大が見込まれるIT関連企業のオフィス需要が特に目立っている。
また、輸出が好調なメーカーや、法律事務所などプロフェッショナルサービスからの需要も相変わらず堅調。2017年1年間の新規需要はプラス17万坪と、新規供給14.1万坪を3万坪程度上回る見通し。この結果、2017年末時点のオールグレードの空室率は対前年末比0.7ポイント低下の1.5%と、2007年以来10年ぶりに1%台での年越しとなったとみられる。
ハイスペックビルへのテナントの関心は高いが・・・
しかし、2018年から東京オリンピック開催の2020年までの3年間は大型の新規供給が続く。2018年と2019年の2年間の平均供給床は23.3万坪と、過去10年間(2007-2016年)の年平均18.0万坪を3割近く上回る水準。そして2020年には、さらにこれを上回る30万坪の供給が予定されている。しかも、新規供給に占めるグレードAの割合は7割に上る。
確かに、グレードAを中心としたハイスペックビルへのテナントの関心は高い。しかし、今後の政治・経済の先行き不透明感や、労働需給の逼迫に伴う賃金上昇の可能性を見据え、企業のコスト意識が高いのも事実だ。このため、リーシングのペースが速いのは大型ビルの中でも比較的割安感のある物件、もしくはテナントにとって有利な条件を引き出しやすい未竣工のビルというのが現状である。