今回は、銀行との金利交渉の戦略を、前回に引き続きある小売業者のケースを例に見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

「なぜ、こんなに現金が必要なのでしょうか?」

沢井商店(仮)は小売業を営んでいますが、
商売は厳しく、借入金は年商以上に上っています。

 

自己資本比率は10%程度、
貸借対照表の右側は借入金だらけです。
一方左側には、土地と建物です。

 

社外流出を抑えて、
少しでも会社にお金を残さなければ、
いつどうなってもおかしくありません。

 

取引銀行9行、それぞれと交渉して、
金利を下げてもらう必要があります。

 

「社長、いま御社には、月商の4ヶ月分の現金があります。
こんなに現金はいりませんね。
なぜ、こんなに現金が必要なのでしょうか?」

 

「なぜと言われても・・・
手元に5億くらいないと・・・ねぇ?
なんかあっても困るでしょう。」

 

「ねぇ、と言われても、そちらのほうが困ります。
私たちは手元の現預金は、月商の1か月分あれば足りると考えています。
おまけに、御社のご商売は現金商売じゃないですか。
だったら余計に現金を厚く持っておく必要はないですよ。」

 

「でもねぇ、ずっとこれくらいの残高を置いて
やってきたからねぇ・・・」

「余剰資金で借入金を返済しようと思っています」

「御社は、当座貸越は結んでいないのですか?」

 

「あぁ、結んでますよ。」

 

「それは何のために結ばれているのですか?」

 

「まさかのために、ですよ。」

 

「だったら、社長、まさかの場合は、当座貸越で対応できるんです。
だから、普段の残高はもっと抑えても問題ありませんよね?」

 

「まぁ、確かにね~」

 

「必要な現金を月商1か月分とすれば、
3か月分の現金が余剰資金になるわけです。
といっても、長期借入金を契約通りに返済してゆく必要があるので、
実質的には月商の1.5か月分くらいが余剰資金になります。

金利をただ下げてくれ、というのではなくて、各銀行に対して、
”おたくの銀行は、金利が高いので、余剰資金で借入金を返済しようと思っています“
と伝えることで、交渉のきっかけにしてください。」

 

「わかりました、やってみます。」

 

(次回へつづきます)

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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