節税マトリックスでみるフロー・ストック対策の関係
ひとくちに「節税対策」といいますが、その中身は大きく2つに分けられます。それは、毎年の決算で所得をいかに圧縮するかというフローの対策と、何年あるいは何十年に一度だけ起こる大きな財産の移動時にどうやって財産を圧縮するかというストックの対策です。
また、オーナー社長やそのご家族という個人のレベルで見た場合には、所得税や住民税、また税金ではありませんが社会保険料がフローの部分で、相続税や贈与税がストックの部分に当たります。
徹底した節税のためには、フローの対策とストックの対策を両方やる必要があります。それは、どちらの対策も独立しているように見えて、それぞれが密接に関わっているからです。
以下の図は筆者がセミナーなどでいつもお見せしているもので、「節税マトリックス」と呼んでいます。
節税対策は「フロー」と「ストック」の両面から行うことが重要です。加えて中小企業では、「法人」と「個人」も一体として節税対策を考える必要があります。この場合、「法人」とは本体の事業会社はもちろん、別会社などグループ全体のことです。また「個人」については、オーナー社長だけでなく、奥様や後継者などを含めたファミリー全体のことを指しています。
なぜかというと、法人の決算対策、個人の所得税対策、法人の自社株対策、個人の相続税・贈与税対策・・・これらはすべてお互いに関わりあっているからです。
中小企業ファミリー全体の節税対策として捉える
わかりやすい例でいうと、法人が自社株対策を行うことは、個人の相続税対策につながります。また、生命保険商品や役員住宅の社宅化といった節税対策では、法人の節税効果が期待できると同時に、個人の所得税を減らし、手取りを増やすこともできるため、法人・個人の双方のフロー対策として活用できます。
逆に、あるひとつの面しか見ていないと、節税をしたつもりがトータルで見ると実は節税になっていなかったということもあります。たとえば、法人税の軽減のために高額の役員報酬を出しているものの、個人の所得税・住民税の負担が増えてしまい、トータルで見た場合にはあまり効果がない、といったような場合です。
これまでは、どちらかというと法人なら法人だけ、決算対策なら決算対策だけといったピンポイントの節税対策提案がなされることが多かったようです。
しかし今後は、中小企業ファミリー全体の節税対策と捉え、このようにフロー、ストック、法人、個人の4ブロックの節税対策について、クロスオーバーさせて検討していくことが主流になっていく必要があると考えています。それこそが最も高い節税効果を生む方法だからです。
なお、日本の税目には、このマトリックスにある以外にも、登録免許税や不動産取得税、消費税などさまざまなものがあります。オーナー企業の業種・業態によっては、マトリックスにある以外の税目が関係してくる場合もありますが、ここでは多くの人に活用していただけるよう、業種業態を問わずすべての会社に関係のある代表的な税目を挙げています。