境界線上に塀を作る場合、隣地の建物所有者と話合いを
Q:今回、家を新築することになりました。新築を機に隣の空き家との境界線上に塀を作りたいのですが、勝手に作ってよいでしょうか。
A:隣が空き家であっても、勝手に境界線上に塀を作ることはできません。
境界線上に塀を作る問題に関しては、民法225条1項で、隣地の建物所有者と共同の費用で塀を設けることができるとしていますので、まずは話合いをすることになります。
その上でどうしても協議が調わなければ、相手方の設置協力を求めて裁判所に提訴することになります。その場合には、民法225条2項で、塀の材質や高さが決められているので、それに基づいて裁判所は判断することになります。裁判をしないのであれば自分の敷地内に塀を建てることになります。
話合いで解決できなければ、第三者を介することも検討
解説
1 囲障設置権
民法225条1項は、隣接する2棟の建物が所有者を異にする場合には、その間に共同の費用で囲障を設けることができるとしており、同条2項で塀の設置に関して当事者の協議が調わない場合には、板塀又は竹垣その他これに類する材料で高さ2mのものとすると規定をしています。これは、隣接家どうしのプライバシーや安全を相互に維持するための規定と言われています。
したがって、まずは空き家の所有者とあなたで塀の設置方法について話合いをする必要があります。ですから、空き家の所有者とまず連絡を取ることになりますが、直接の話合いで解決がつかない場合には、簡易裁判所での調停や弁護士会でのあっせん制度を利用して、第三者を介した話合いで解決する方法を模索してみるのも有効です。なお、調停は、相手方の住所地が管轄裁判所となりますのでご注意ください。
建物は必ずしも現存する必要はないとされていますので、あなたの旧建物の取壊し後であったとしても、空き家の所有者との話合いは可能です。また、あなたが土地の所有者でなく、建物のみを所有している借地人であっても、囲障設置を請求する権利があります。
2 話合いが調わない場合
協議をしても設置方法や設置時期などで話合いが調わないときには、あなたの敷地の範囲内に自己の費用で塀を設置するか、どうしても共同の費用で境界線上に塀を設置したいのであれば、隣の空き家の所有者に対して設置協力を求める裁判を提起することになります。
なお、防火地域や準防火地域においては、塀の材料に一定の制限があり、板塀や竹垣が設置できない場所もありますし、建築協定がある地域では建築協定に従わなければなりません。
また、一方的に塀を建てた後で隣の空き家の所有者に半分の費用を請求するという方法は認められませんので、注意が必要です。
裁判を提起する場合の請求の趣旨は、以下のようになります。
被告〇〇は、原告〇〇と費用折半にて別紙図面A、Bの点を直線で結んだ線上に高さ2メートルの板塀を設置することを承諾せよとの裁判を求める。
3 塀の設置が認められないケース
塀の設置が、隣の家の権利を侵害するような場合には、権利の濫用となり設置が認められないことも起こりえます。例えば、塀の設置によって隣の家の日照や通風を阻害する場合には、塀の設置が権利の濫用と判断されるおそれがあります。
また隣地に家が建っていない単なる空き地の場合には、民法225条の適用はなく、全額設置者の負担で設置することになるとの考えも主張されています(篠塚昭次『不動産法の常識(上)』491頁(日本評論社、昭49))。
参考判例
●隣地所有者に境界線上に費用折半で板塀を設置することを承諾することを命じた事例(東京地判昭60・10・30判時1211・66)