今回は、第三者による空き地への不法投棄物が自宅の敷地にはみ出している場合の対応について見ていきます。※本連載は、『空き家・空き地をめぐる法律実務』(新日本法規出版)の中から一部を抜粋し、困った空き家・空き地の問題について、Q&A形式で解説します。

不法投棄した人物の責任で、所有者に責任はないが・・・

Q:私の家の隣の土地は長い間空き地になっており、いつの頃からか第三者が要らなくなった家具や電化製品を捨てるようになり、投棄された廃棄物が私の土地にまであふれてきています。空き地の所有者に対し「何とかしてください」と何度もお願いしましたが、「私が捨てた物ではないから、捨てた人に言ってくれ」と言われるばかりで、何もしてくれません。私は、空き地の所有者に対し、損害賠償を請求できないのでしょうか。

 

A:基本的には、空き地の所有者が言うとおり、不法投棄した人物の責任であり、空き地の所有者には責任はありません。

 

ただ、不法投棄された物があなたの土地にあふれ出しそうになっているにもかかわらず、空き地の所有者が、何ら有効な手立てをとらず、そのためその後も不法投棄が続き、不法投棄物があなたの土地にはみ出してきたような場合には、損害賠償を請求できる余地があるものと思われます。

損害賠償を請求できる例外的なケースとは?

解説

 

1 原則

 

空き地の所有者が投棄した廃棄物があなたの土地にあふれてきているのであれば、空き地の所有者に対し、撤去を求めたり、損害賠償を請求したりできるのは当然です。

しかし本問では、廃棄物を投棄したのは第三者で、撤去義務、損害賠償義務を負うのは第三者であり、空き地の所有者ではありません。

 

2 例外

 

では、あなたは、空き地の所有者に対して、一切損害賠償を請求することはできないのでしょうか。

 

不法投棄された物が空き地にあふれかえり、隣地にまではみ出しかねない状態になっており、かつ隣地の所有者が何度も抗議をしているような場合には、空き地の所有者は、所有者として、隣地の所有者との関係で、不法投棄物が隣地にくずれ落ちたり、はみ出したりすることがないように防止すべき条理上の義務があると考えられます(大阪地判平22・7・9判時2091・64、【事例3】参照)。具体的には、隣地との境界に塀を設置するとか、不法投棄が行われないように警告文を掲示するとか、空き地に柵を設置して立ち入れなくするなどの措置をとる義務があると思われます。

 

空き地の所有者が上述したような方策を何らとらないために、不法投棄物が隣地であるあなたの土地にはみ出してきた場合には、空き地の所有者による不作為によってあなたの土地の所有権が侵害されたことになるので、あなたは、空き地の所有者に対し、民法709条に基づき損害賠償を請求できる可能性があります。

 

参考判例

 

●地方公共団体が管理する道路供用予定地の上に放置された可燃性廃棄物に放火され隣接建物に延焼し、被害者から地方公共団体に対し損害賠償請求訴訟が提起された事案で、地方公共団体には、無関係の者を本件土地に立ち入らせないように遮蔽措置を講じたり、不法廃棄物が放置されているのであればこれを撤去すべき義務があるとし、国家賠償法1条1項の損害賠償責任を認めた事例(大阪地判平22・7・9判時2091・64)

本連載は、2016年2月15日刊行の書籍『空き家・空き地をめぐる法律実務』(新日本法規出版)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

空き家・空き地をめぐる法律実務

空き家・空き地をめぐる法律実務

編集:旭合同法律事務所

新日本法規出版

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