まずは所有者に連絡し、所有者との関係を確認
Q:近所の空き家に不審な人が出入りしています。その人が空き家の所有者の親戚とか知人であれば、少し安心できますが、所有者と関係のない人であれば不安です。どうすればよいでしょうか。
A:裁判所に何らかの申立てをして解決するという意味での法的手段ではありませんが、適法に対処できる手段としては、まず、所有者に連絡して状況を説明することによって、所有者に関係がある人かどうかを確かめることができます。所有者とは無関係の人だということがわかった場合は、無断で他人の家に立ち入らないことを、所有者から不審者に申し入れてもらうことを依頼できます。所有者が遠隔地に住んでいて、その申入れが難しい場合は、所有者からの委任を受けて、不審者に会い、その家になぜ出入りしているのか理由を尋ね、立入り禁止の申渡しをすることができます。
不審者と所有者の関係別の対処法
解説
1 不審者が所有者の関係者である場合
空き家の所有者に連絡して、その家に出入りしている人が空き家の所有者の知人又は親戚の人であることがわかった場合は、出入りしている人に、以後の建物管理を実施して欲しいことを依頼します。
もし、その家を住居として使用するための出入りであれば、住民の一員として良好な近隣関係を築く機会ですから、懸案の空き家問題が1つ解消します。
また、空き家への出入りが住むためではなく、例えば品物を一時的に保管する場所として使用するなどの目的である場合は、用心のため火の始末と戸締りに気を付けてほしいと伝え、建物の管理を申し入れておくことができます。
2 不審者が所有者と関係のない者の場合
(1) 所有者からの申入れ
空き家の所有者に確かめた結果、その家に出入りする人が所有者と無関係な不審者であることがわかった場合は、所有者から不審者に対して、他人の家に無断で立ち入ることを直ちに止めるように申し入れてもらいます。
(2) 所有者からの申入れが難しいとき
空き家の所有者が遠隔地に住んでいるなどの事情で、所有者から不審者への申入れが困難なときは、所有者から委任を受け、所有者の代理人として不審者に会い、この家に出入りしているのはなぜかを質問して、出入りの目的を確認します。その上で、不審者に対し、建物からの退去と、今後の立入り禁止を申し渡すことができます。
注意すべきことは、不審者と会う場合は不測の事態を避けるため、1人で会わないで必ず2人以上の人数で会うことと、その際の不審者の言動を直後にメモしておくなどして証拠を確保しておくことが大切です。
(3) 捜査機関への通報
所有者の代理人として、不審者に対し出入り禁止などを申し渡したにもかかわらず、不審者が空き家への出入りを続けるときは、住居侵入等(刑130)の犯罪になります。そのときは、警察に通報して取締を要請することができます。告訴・告発・被害届を提出することもできます。
(4) 所有者からの委任状
建物の所有者から委任を受ける際は、委任状をもらっておいた方が、不審者に会うときにも、警察へ通報するときにもスムーズに進めることができます。このような場合に使う委任状としては、書式が参考になります。
書式
●委任状
委任状
私は、〇〇市〇〇町〇丁目〇番地に所在する木造瓦葺2階建て建物(以下「本件建物」という。)の所有者ですが、今般、〇〇〇〇を代理人と定め、下記事項を委任し、その権限を授与します。
記
1 本件建物を占有又は使用する者に対して、その中止をさせること。
2 本件建物に出入りする者に対して、出入りを禁止させること。
3 上記1、2の委任事務を遂行するに当たり、委任事務補助者に協力を求め補助を受けること。
4 上記1、2の委任事務に関連する犯罪について、捜査機関への告訴・告発・被害届の提出及び取下げに関すること。
以上
平成〇年〇月〇日
委任者 住所 〇〇市〇〇町〇丁目〇番地
氏名 〇〇〇〇 ㊞