3つの社会的構造の変化が、社会秩序悪化の原因に!?
前回の続きである。AIやブロックチェーン技術による労働代替で、所得格差が拡大し、社会秩序も徐々に悪化していくだろう。
社会秩序が悪化する要因について、リンダ・グラトンの著書『ワーク・シフト』では、「人々の豊かさの決定要因の変化」、「勝者総取りによる社会格差」、「劣等感や恥の意識の強まり」の3つの社会的構造の変化を挙げている。
まず「豊かさの決定要因の変化」とは、生まれた場所によって経済的な成功が決まることが急減し、今後は才能とやる気と人脈こそが豊かさの重要な決定要因へと変化する、という指摘だ。労働代替によって、聡明な頭脳と強い意欲が欠けている人は下層階級から抜け出せないシビアな社会へ移行していくということになる。
また、新たな勝者と敗者の間の格差が拡がり続ける結果、勝者は勝者同士、敗者は敗者同士で結びつきが強まる。
一方で、急激な格差の拡がりによって社会情勢は不安定さを増し、他人への関心を持たない、協力し合わないなど、物事の共有に消極的になっていく。他人の行動に対しても楽観的な考え方をしなくなる結果、イノベーションに期待することが難しい社会へと変化していく。これが「勝者総取りによる社会格差」だ。
さらに、経済格差の拡大を背景に人々は劣等感や恥の意識を植え付けられ、どのようなコミュニティに帰属しているかが重要となり、挑戦しない人々が閉鎖的で排他的なムラ社会を形成していく。
また、ナルシズムと自己アピールが過度な人々が増加し、特にインターネット上での結びつきが増すだろう。「劣等感や恥の意識の強まり」が起こることで自殺・事件・暴動などが至る所で生じ、社会秩序の維持コストが上がってしまうことになるだろうという指摘だ。
失業と悪いインフレが発生する、スタグフレーションへ
繰り返すが、ブロックチェーンやAIなどの技術革新によって雇用代替が進み、同時にビジネスモデルのイノベーションを興こした企業がグローバル競争の勝ち組となる。一方、グローバル競走の負け組となった日本企業は相次いで経営不振に陥ったり、雇用が崩壊する。失業者が増加することで、それに伴い税収も減少する。
また、格差が拡大していくことから社会秩序が徐々に悪化。政府は財政健全化に向け高税率への移行を進める。その結果、資産保有者たちに国内から海外へ資本を移すキャピタルフライトが生じ、円安となる。
賃金上昇や需要増によって起因される良いインフレではなく、円安によるコスト上昇で価格が上昇する悪いインフレが発生。日本は失業と悪いインフレが同時に発生するスタグフレーションに陥る。国内産業は弱体化し、優秀な小作人として生き残る以外に道はない。これまでに経験した経済発展の恩恵はなくなり、急速に没落していくことになる。