今回は、仮想通貨に対し、日本が担うべき役割とは何かを説明します。※本連載は、金融情報全般を扱う大手情報配信会社、株式会社フィスコ監修の『FISCO 株・企業報 2017年冬号 今、この株を買おう』(実業之日本社)の中から一部を抜粋し、「第4次産業革命」以降の日本経済のゆくえを探ります(分析:株式会社フィスコIR取締役COO・中川博貴氏)。

仮想通貨に対する積極的な取り組みがうかがえる米国

仮想通貨やICOに対して、欧米諸国では現状、全面的な禁止や規制強化といった取り組みは出ていない。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は9月27日、ビットコインや仮想通貨を禁止・規制するような権限がECBにないと発言している。

 

また、アメリカでは大手オンラインショップが米国証券取引委員会(SEC)監督下で、有価証券と分類されたICOなどに利用されるトークンについて、代替的取引システム(ATS)を提供しようとするなど積極的な取り組みがうかがえる。

 

今後、仮想通貨市場や、関連技術による新たな金融シーンはさらに発展する可能性が大いにある状態だ。

日本が仮想通貨市場の「中心的存在」を狙う意義は大

現在、日本は伝統的な方式によるアジアの金融センターという立ち位置を香港やシンガポールに譲る状態だが、仮想通貨や関連する新技術の市場整備を加速させてアジアの仮想通貨センターを目指すことは、新たな金融シーンにおける日本の存在感を示す上でも重要であるといえる。

 

また、日本にとってこうした新たな市場に対する潜在能力を蓄え、国際的に中心的な立場をという積極的な姿勢は、今後の日本の経常収支の赤字化を食い止める上でも重要になってくる可能性がある。

 

現在日本の国際収支は、経常収支は黒字を維持しているものの、今後貿易・サービス収支が赤字転換し、所得収支の黒字幅も縮小することから、経常収支が赤字へシフトしていくと予想される。

 

各国の国際収支はその成熟度に合わせて段階的に変化してゆくという「国際収支の発展段階説」では現状の「未成熟な債権国」から「成熟した債権国」の段階へと移行している。

 

また、ゆくゆくは次の段階である「債権取り崩し国」となって、海外保有資産の取り崩しなどによる経常収支の赤字化に陥ることも予想される。

 

現状では日本の所得収支の黒字は外国債など債券からの利子収入に頼るところが多く、海外企業のM&Aや海外における工場建設といった直接投資からの配当収入は少ない。このため、今後対外直接投資とともに対内直接投資をいかに拡大するかも生命線になるといえよう。

 

このような視点からも、中国や韓国が仮想通貨に対して厳しい規制を敷く姿勢を見せている中、日本がさらなる成長の可能性がある仮想通貨という新たな市場においてアジアの中心的存在を狙う意義は大きい。

FISCO 株・企業報 2017年冬号 今、この株を買おう

FISCO 株・企業報 2017年冬号 今、この株を買おう

株式会社フィスコ

実業之日本社

フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議 本誌掲載の「日本経済シナリオ」の執筆を行った、フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議とは、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世…

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