個人の場合、長期譲渡のタイミングでの売却が効果的
Q:収益物件はどの程度の期間所有するのがベスト?
収益物件の売却を考える場合、投資効率を最大化させるためには、いつまで所有するのがよいのでしょうか? 個人と法人、それぞれのベストなタイミングを教えてください。
A:個人なら5年超の長期譲渡のタイミングでの売却がベスト
取引主体が個人の場合は、収益物件の保有期間によって売却益にかかる税率が異なります。短期での売却だと税率が約40%ですが、5年を超える長期になると約20%になります。税率がおよそ半分になるので、個人の所有であれば長期譲渡になるのを待ってから売却するのが節税の面では効率的だといえます。
もちろんその時の相場も関係してきますので、売却価格まで含めての判断になりますが、相場が一定であるとの前提であれば長期譲渡のタイミングでの売却が最も効果的となります。
特に高額所得者にとっては、先述した通り、保有中は総合課税で高い税率で減価償却を行い、物件売却時には分離課税のため税率が20%に抑えられるので、非常に節税効果が高くなります。と同時にこの税率のギャップによって利益を最大化することが可能です。
長期譲渡に関して注意すべきなのは、購入した日から満5年間ではなく、保有後6回年を越すこと(1月1日時点で、5年超所有していること)が要件であることです。満5年保有していても、年を越したのが6回未満であれば短期譲渡となります。
個人の譲渡所得は分離課税ですが、同年に他の不動産物件を売却した損失があれば、その損失の金額を他の物件の譲渡益の金額から控除できます。
つまり、個人で複数の物件を所有している場合は、売却することで利益が出る物件と、損失が出る物件を同年に売ることで、譲渡益の金額から損失分を控除できるため、さらに効果的に節税できるということです。
新築ワンルーム投資などで、明らかに売却損が出る物件を所有している人は、この機会に同時売却で清算するのもよいでしょう。なお、譲渡益以上の損失があって控除しきれなかった場合でも、事業所得や給与所得など他の所得と損益通算することはできません。あくまでも不動産という枠の中での控除だけが認められています。
法人の場合、本業や他の物件とのバランスを考えて売却
法人で収益物件を所有している場合は、所有の目的別に出口戦略が変わってきます。法人の場合は個人と違い、売却益も総合課税になるので、本業や他の物件とのバランスを考えながらの売却となります。
まず、節税を重視する場合ですが、法定耐用年数を超えた木造アパートの場合は、4年を超えて減価償却のうまみが減った物件から売却し、新たな物件を入れ替えで購入していくという戦略が考えられます。そうすることで、減価償却の節税効果を切れ目なく継続させることができ、理論上は課税の先延ばしを延々と続けることができます。もちろん売った物件には売却益が発生しますので、赤字と相殺できるタイミングがベストといえます。
また、法人で複数棟を所有しているケースでは、同一年度内に大規模修繕で赤字が出るA物件の修繕に合わせ、売却益が出るB物件を売り、結果として損益を相殺させるといった手法も活用できます。
さらに、本業の資金繰りで資金が必要になった場合に売却して売却益を得るという方法もあります。
いずれにしても収益物件は会社経営に活用することで大きなメリットを享受することが可能となる強力なツールとなります。
[図表]短期譲渡と長期譲渡