対前年売上高を二桁以上伸ばしていく会社とは・・・
私の顧問先で、不動産の売買、仲介を行う業績好調のH社があります。この会社のU社長は、世の中の変化に常に敏感で、業態開発、フロントエンド商品の開発がうまい。
会社倒産、廃業、リストラなどによって、住宅ローンの返済ができなくなった債務者は、競売によって市場価格よりも極端に低い価格でマイホームを処分され、アパートなどに移り住む引っ越し費用すら残らない場合が多い。
こういう住宅ローンを抱えた債務者のマイホームを、競売ではなく、任意売却によって市場価格で売却することによって、債権者にも債務者にもメリットがあるという業態を開発し、業態の入り口は「一般社団法人」を設立、住宅ローンに窮する債務者に安心感を提供しました。
H社のフロントエンド商品は、一般社団法人による住宅ローンの救済であり、バックエンド商品は、今まで通り不動産の売買・仲介です。
U社長は、このスキームを導入するに当たって、平成25年の正月、1週間悩みに悩んだそうです。これから自分がやろうとしていることが、本当に世の中のためになるのだろうか・・・と。社長の思い、社長の正義が手帳にびっちりと記してありました。現在の問い合わせ件数は、月に20件を超えているそうです。
私の事務所のフロントエンド商品は、銀行借金の返済条件変更や複数債務の一本化など、金融調整支援を含めた再生支援です。そして、バックエンド商品は、相変わらず税務顧問です。
今、新商品や新業態を開発せずに、対前年売上高を二桁以上伸ばしていく会社を見たことはありません。何も、今までネジをつくっている会社に、ラーメン屋をやりましょう、と言っているわけではありません。自社の強み、自社の本命であるバックエンド商品を提供していくために、どんな業態を開発し、どんなフロントエンドを持つか、考えなければならない時期であると思います。
考えるか否かで、成果に大きな差がつく低成長時代
たとえば、あなたの会社が住宅のリフォームを仕事にしている場合、そろそろリフォームでもと思っている顧客に向けて、新聞や折り込みチラシで広告を打ちます。ところが思っていたより電話が鳴らない、鳴ってもほとんど相見積もりで決まらない・・・。こんな経験が少なからずあるのではないでしょうか?
それもそのはず、そろそろリフォームと思っていた顧客のうち、あなたの広告を見てすぐに受話器をとる人は、よっぽど変わった人か、すでに他社も調べ尽くしている人です。通常は、あなたの会社より安くていいリフォーム会社はないかとネットを使って調べ始めることでしょう。1円だって損したくないというのが人間の心理です。
あなたの広告は、顧客に対して他社と比較するという動機づけをしたにすぎないのです。商品そのものに圧倒的な違いがない限り、ここからライバルであるリフォーム会社との本当の価格競争が始まります(商品に圧倒的な違いがあると思っているのは、コチラだけの場合も多いですが・・・)。
顧客の行動心理を読まなければ、広告費をさらにかけて、さらなる価格競争に挑むことになります。では、価格競争せずに新規顧客を取り込むにはどうしたらいいのでしょう?
今すぐリフォームしたいという顧客群は、他社とよほどの違いがない限り、価格でしか釣ることはできません。最近の広告に対する反響率の悪さが物語っています。また、リフォームにまったく興味を持っていない人は、はなからあなたの広告に目は留まらない。そう、ターゲットは、いつかはリフォームと考えている顧客群しかいないことになります。
そうすると、広告というのは商品を売ることが目的ではなく、リフォームに興味がある人に自ら集まってもらうことが目的ということがわかります。自ら集まってもらう方法は、いつかはリフォームと考えている顧客群が知りたい、または知っておいたほうがいいという情報を発信していくことです。
「失敗しないリフォームのすすめ」などの小冊子で情報を発信したり、「リフォーム会社が本音で話す○○」「騙されない○○」などのセミナーを企画して、コミュニティーをつくり、顧客群の「失敗したくない」という欲求をただただ満たしてあげながら、信頼関係をつくっていきます。
信頼関係は、顧客群が考える期待をこちらが超え続けることですから、他社が逆立ちしてもマネできないような情報の質と企画の内容、接客や応対に至るまで、相当の時間とお金を投入して、この会社に頼めば絶対損はしないな、という空気を顧客に感じてもらうことです。こうなると、ライバルが競争相手から自分たちに変わります。
広告宣伝とは、間違ってもこちらの商品を宣伝することではありません。興味がある人に集まってもらうしかけをつくり、顧客が自ら購入への階段を上っていくプロセスに全力をあげ、信頼関係を構築することです。ここまでくるとほとんどの場合、価格の要素は無関係になるでしょう。
低成長時代では、考える人と考えない人の成果に、ものすごい差がつきます。