前回、儲かる会社にするための「社長の仕事」とは、「仕事を創造する」ことだと述べました。今回は、どうやって仕事を創造すればよいのか、具体例と合わせて見ていきます。

顧客はモノやサービスで得られる「機能」を買っている

社長の仕事とは「仕事を創造する」ことです。では、どうやって仕事を創造していくのでしょうか。

 

あるところに、建築工具の電動ドリルを製造販売していた会社がありました。ある時、レーザー光線で穴を開ける機械が世の中に登場したのですが、その会社の社長は「うちの売り物は電動ドリルだから、レーザー光線のドリルはうちには関係ない」といって何の対策も打ちませんでした。

 

しかし、簡単にきれいな穴が開けられるレーザー光線の機械に顧客を奪われた結果、その会社は販売不振に陥り潰れてしまったそうです。

 

この社長の判断には大きな間違いがありました。顧客は電動ドリルを買っていたのではなく、「穴」を買っていた。穴を開けるという機能を買っていたのです。それまで、穴を開けるという機能をたまたま満たしていたものが、電動ドリルだっただけで、顧客は電動ドリルを買っていたわけではなかったのです。

 

この逸話のような物語は、私たちに何を示唆してくれているのか。会社が売っている(と思っている)モノと、顧客が買っているモノとが違っていた――。顧客というのは、モノやサービスを購入する際、そのほとんどは、モノやサービスそのものではなく、そのモノやサービスを手に入れることによって得られる「機能」を買っているのです。

 

体重計を販売しているタニタという会社があります。タニタは、顧客は体重計で何を量っているのかと考えた結果、体重の数字そのものが知りたいわけではなく、自分が健康かどうかを知りたいのだという結論に行き着きました。その結果、体脂肪計というヒット商品が生まれました。

 

機能に着目した結果、顧客は体重計で「体重」を量っていたわけではなく、「健康」を測っているのだと気づいたのです。現在のタニタの理念は、「我々は、『はかる』を通して世界の人々の健康づくりに貢献します。」です。素晴らしい理念であり、機能です。

 

新幹線に乗る人は、目的地に早く着くという「時間」を買っています。ディズニーランドに行く人は、アトラクションにお金を払っているわけではありません。日常生活では味わえない夢のような「空間」にお金を払っています。

自分の会社が取り扱える「機能」は何か?

私の事務所では、事業の機能を「中小企業の問題解決」と定義しています。借り入れができない、数字がわからない、社員が一生懸命働かない、生産性が悪い、営業が弱い、管理がズサン、儲からない、儲かったと思ったら税金でもっていかれる・・・すべて問題です。税金は、社長が抱えているたくさんの問題の中の一つにすぎない。

 

中小企業に起こる問題を解決に導くために支援することが、私の事務所が世の中から与えられた機能です。まだまだ創造すべき仕事は、たくさんあります。

 

先日、銀行の方から、年商で8億円ほどのある会社を紹介されました。その社長は、同業の社長から経営計画書をつくってこんなふうにやっていると聞いて、早速顧問の税理士に相談したら、「うちは税理士事務所だから・・・」を連発されたそうです。あきらめて、銀行に経営計画に強い税理士を紹介してほしいと頼んだそうです。

 

あなたの会社の世の中から見た機能は何ですか。いつまでも、電動ドリルにしがみついているわけにはいきません。

本連載は、2014年2月27日刊行の書籍『低成長時代に業績を伸ばす社長の条件 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

低成長時代に業績を伸ばす 社長の条件

低成長時代に業績を伸ばす 社長の条件

関根 威

幻冬舎メディアコンサルティング

バブル崩壊以降、日本経済は長期的な低迷を続けています。いまや日本企業の75%が法人税を払っていないのが現状です。このような低成長時代には、経営者は何を心がければいいのでしょうか――。 本書では、外部コンサルタント…

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