銀行交渉をうまく進められなかった、30代の若社長
多くの経営者と接していますと、
銀行交渉にしても、
「なるほどさすがだな。」と、勉強になることがあります。
その経営者は、若くして先代から引き継ぎました。
年齢はまだ、30歳代半です。
先代もお元気ですが、自分自身が若くして引き継いだので、
次代も、ということで、退かれたのです。
銀行借入も発生している会社なので、
銀行交渉についてお伺いしました。
「もちろん銀行交渉は、社長がされているんですよね。」
「そうです。年齢が若いからか、
最初は交渉がうまくゆきませんでした。」
「というと。」
「結局、銀行の条件に歩み寄るような形になっていたんです。」
「今もですか?」
「今は状況が変わりました。
財務状況が良くなったこともありますが、先代を引き合いに出してます。」
とおっしゃるのです。
「俺が交渉する、って、先代が言ってるんですよ」
先代は、なかなか豪快な方で、
銀行支店長にも、煙たがられる存在だったそうです。
「具体的に、どう引き合いに出すんですか?」とお聞きしました。
「交渉の過程で銀行が渋い顔をしだしたら、こんな風に言います。」
「どう言うんですか?」
「お前が交渉して銀行がOKと言わないんなら、
俺が交渉する、って、先代が言ってるんですよ。」
当然、銀行交渉のことなど、先代は知りません。
しかし、何かと口うるさかった先代が交渉に出てくる、
というのは、当の銀行支店長らは避けたかったのです。
「異動とかで、支店長も変わるでしょ。」
「そこは地銀の本店なので、異動しない人も多いんです。」
とのことでした。
「そうやって、金利を下げたり、個人保証を無しにしたり、
してきました。」
と言うのです。
「しかし、よくそれだけ考えて交渉してきましたね。」
と感心すると、
「経営道場のブログを読んでいると、
自分もなんとかできないかな、と思って、考えました。」
と、嬉しいことをおっしゃってくださいました。
とはいえ、先代が銀行にとって、
煙たがられる存在だったからこそ、できたことです。
つまり、そのような存在になっていれば、
次世代にも影響力を残せる、ということなのです。
次世代が銀行交渉しやすい環境を残すためにも、
銀行には、煙たがられる存在であってほしいのです。